1. 革のなるほど。 vol.11〜14


革のなるほど。

知ると誰かに話したくなるような、
革などにまつわるエピソードやまめ知識をご紹介します。

革
革

沖縄から奄美諸島にかけての地域で親しまれている「三線」という弦楽器は、「蛇皮線」という俗称の通り、蛇の皮が張られています。この蛇皮は沖縄にいる毒蛇・ハブの皮ではなく、わざわざ東南アジアなどから大型のニシキヘビの皮を輸入して使っていますが、それはハブの皮では小さすぎて胴に張れないためです。

三線に張られている蛇皮は鞣されたのではなく、自然乾燥で作られたものですので非常に繊細です。そのため長期間使わないときには、なんとあのハブから採ったオイルを塗るのだそうです。最近では、その面倒をなくすためにヘビ柄をプリントした人工素材を張ったものも見かけられますが、音の響きが劣るため、今でもプロ奏者はヘビ皮の三線を使うことが多いようです。

革
革

「愛の女神」と言えば、ローマ神話のヴィーナス(ウェヌス)。そのヴィーナスの絵画の作者として最も有名なのが、「ヴィーナスの誕生」を描いたルネッサンス期の画家、サンドロ・ボッティチェッリでしょう。ボッティチェッリはイタリア・トスカーナ州の大都市フィレンツェ出身で、メディチ家の保護の下で名作を次々に描きましたが、父親はなんと工房持ちの皮鞣し職人でした。

元々、ボッティチェッリが活躍したフィレンツェは古来より革産業が非常に盛んで、町の守護聖人に洗礼者ヨハネを戴くほどでした。ヨハネはラクダの革で作った一張羅の服を着て放浪していたとされていますが、この革はヨハネが自分で鞣したものなのだそうです。そのためヨハネは革鞣し職人や仕立屋などの守護聖人とされており、フィレンツェの守護聖人にもされたと思われます。

革
革

動物の皮は鞣して「革」にする以外に、古くから接着剤を作ることにも使われました。それが「膠(ニカワ)」と呼ばれるものです。これは牛などの動物の皮に水を加えて煮込み、それをろ過して乾燥させたもので、ゼラチンが主成分。5000年以上前から利用されていたようで、ツタンカーメン王の副葬品の家具にも使われていました。日本には7世紀初め頃に大陸から伝わったようです。

膠は木材を極めて強力に接着するため、家具や武具の製造に瀕用されました。また蒸気を当てるときれいに剥がれるため、バイオリンなど補修や調整の多い木製楽器の製作に今でも重宝されています。一方で、中国や日本では墨を、欧米では絵の具を練り材にも使われ、兎の皮が最高級品とされました。なお日本での膠の製造は、革の製造と同じく姫路市に集中しています。

革
革

昔の理髪店では、長い革の帯を壁に掛けていた所がよくありました。実はこれ、なんと剃刀を研ぐためのもの。「革砥(かわと)」と呼ばれ、革の床面(肉側の面)に研磨剤を塗り、下端を掴んで帯を軽く張りながら剃刀を研ぎます。剃刀は砥石でも砥げますが、仕上げには必ず革砥が使われました。それは、砥石では刃先が真っ平らにしか砥げないからです。

顔という複雑な曲面を剃る剃刀は、刃先が微妙にカーブしています。しなやかな革砥はその具合を微妙に調整することが可能で、熟練の理容師は客の顔に合わせて剃刀を砥ぎ変えたそうです。ちなみに、革砥の素材はコードバン。線維の固さと肌目の細かさ、適度な張りが革砥に最高なのだとか。なお、現在コードバンの革砥を作る工房は、日本では一つだけです。

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