1. ペルー紀行世界遺産マチュピチュ編

旅

それは、空と山々だけが見ていた。
誰も知らない天空都市の謎に、体の全細胞が騒ぎだす。

旅往く鞄 ペルー・マチュピチュ篇

鞄といえば旅、旅といえば鞄。
旅と鞄は切っても切れない存在です。旅好きの土屋鞄スタッフが歩んだ、忘れ得ぬ思い出の旅行記をお届けします。

1911年、ペルーの山奥でほぼ無傷のまま発見された、幻の天空都市と呼ばれる「マチュピチュ」遺跡。
約500年前スペイン軍からの征服を逃れ、天空からでなければ決して見つからないこの地で、文字も、鉄器も、大型家畜も持たないインカの人々が、美しい石積みの都市をひっそりと築いていた。

天空都市と呼ばれる「マチュピチュ」の存在を雑誌で初めて知ったとき、デジャヴだと思った。
きっとそれは、宮崎 駿監督の映画「天空の城ラピュタ」を見て脳裏に焼き付いてしまったヴィジョンとリンクしたせいだ。映画で描かれる空の上に浮かぶ朽ちた宮殿と、それを包み込む美しくのどかな自然の風景。アニメーションなのに妙にリアリティーがあって、本当にラピュタはあるのではないか、いや、あって欲しいと空を見上げる度に祈ったものだ。現実のラピュタをどうしても見たくて遥か地球の裏側まで、マチュピチュへと向かう朝もやに包まれたアンデスの列車の中でもまた、ラピュタを探して空を目で追う自分がいた。

ペルー


旅

雲の中の長過ぎる旅路

もうもうと煙でかすんだような空気に朝日が拡散して、薄ぼんやりと山々が浮かび上がる幻想的な景色。標高2,000mを超える山中の寒さで凍える私たちを乗せ、列車は進んでゆく。辺りを覆うもや……実は列車ごと雲の中に入っていたのだ。
列車の窓はスクリーンのように、雲に包まれるこの高地で作物を育て人々と家畜が営んでいるたくましい景色を、エンドレスで流し続ける。
飛行機で雲の上を約20時間、さらにこうして雲の中を列車でくぐり抜け、最後に断崖絶壁ギリギリの山道を走るバスに乗り、雲に溺れながら夢焦がれた旅のゴール「マチュピチュ」の門前に降り立つ。

ペルー

突如として山間に現われる、天空都市

空気の薄さでやや酸欠状態になりながら遺跡を見下ろせる高台に登りつめると、500年前に作られたとは思えない石積みの整然とした街並みが、突如として山間に現われる。
空と雲が低く辺りは切り立った崖なため、街自体が空中に浮かんでいるようだ。その異空間ぶりに足がすくむ。
「絶景」という言葉がチープに感じるほどのスケール感に興奮し、ハードな旅路の疲れも一気に吹っ飛び、五感と体の全細胞が騒ぎ出す。カメラを取り出しシャッターを切ったが、このスケール感はファインダーには到底収まるはずがなかった。

旅

石積みの街並みに足を踏み入れると、精密にできたジオラマの中に閉じ込められたような、現実離れした不思議な感覚に陥る。
遺跡の背後には、まるで城のように聳え立つワイナピチュ山の美しいこと。山の急斜面に見渡す限り続くアンデネス(段々畑)、みっちりと緻密に石積みされた美しいこの街並みを、どうやって、そしてどうしてこの地に築いたのだろう。遥か500年前の想像を絶する作業風景に、想いを馳せずにはいられなかった。

TOP