1. トルコ紀行世界遺産カッパドキア編

旅

ここは異次元か、地の果てか。
数億年の時がつくりだした、大自然の不思議な彫刻。

旅往く鞄 トルコ・カッパドキア篇

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旅と鞄は切っても切れない存在です。旅好きの土屋鞄スタッフが歩んだ、忘れ得ぬ思い出の旅行記をお届けします。

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トルコ

奇岩が連なる壮大で不思議な世界遺産へ。

見たことのない摩訶不思議なキノコ岩群で有名な「カッパドキア」。
数億年前に起きた火山の噴火によって積み重ねられた地層が、長い年月をかけて風雨により侵食され続け、固い部分だけが残されて複雑な凹凸となった奇岩地帯である。
奇岩に囲まれたカッパドキアの小さな村に向かう車中で、針山のように尖る岩々を現実離れした心地で眺めていた。昔読んだSF小説の世界のイメージが、目の前に広がるような感覚だ。

巨大なマッシュルームのような岩々を利用した洞窟ホテルが集まる、素朴なギョレメの村へ着いたのは、日没の遅いトルコの夕日がゆっくり傾き始めたころだった。
村からほど近いピンク色の谷「ローズバレー」が夕日を受けて、桃色から紫色へと移り変わってゆくそばで、やさしくそよぐ麦畑。まるで私たちの滞在を歓迎してくれているかのようだった。

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岩のなかに残る、蟻の巣のような地下都市

翌朝、「今日はお腹いっぱい岩を眺めるぞ」と意気込んで、土の匂いが充満した洞窟ホテルを後にする。バスの窓から目に入るのは、淡い地層のグラデーションが美しい、キノコ状のユニークな形の岩々たち。よく見るとその岩肌に、虫穴のように小さな窓やドアがちまちまと彫られている。まぎれもなく、かつて住居として人々に使われていた跡だ。
そして、住居として使われていたのは、地上の奇岩だけではない。バスが到着したのは、蟻の巣のように掘り下げられた「カイマクルの地下都市」だ。
洞穴のような路地を下りると、地下何10mにも深く深く迷路が張りめぐらされ、光の入らぬ地下では方向感覚を失う。各階に通気孔、礼拝堂、食料庫があり、この場所になんと2万人もが暮らしていたという事実に驚く。
ここは、アラブ人から逃れるため、キリスト教徒がやむなく選んだ住処。その信仰心の深さは、まさに地球の裏側にまで及んでいたのだ。

トルコ

断崖絶壁に隠された、あたたかなフレスコ画

カッパドキアをさらに南に進み、緑深い「ウフララ渓谷」へ。
約100mもある切り立ったこの断崖絶壁にも、5,000もの住居が残されていた。ここにもやはり、キリスト教徒たちの信仰心が。洞穴のような教会の天井に、なんとも味わい深い手作りの素朴であたたかなフレスコ画が残されている。人が住むなど考えられないような僻地に暮らしてまで、その信仰の火を絶やさぬ精神で掘り進めた道。

数億年かけてできた地上の奇岩に加えてさらに、地下へ続く数億年の地層。合わせて何10億年分の地層を見たことになるだろうか。
空が今日もまたゆっくりと暮れ始め、カッパドキアの岩々の影を、さらに長く長く伸ばす。

旅

(2007年6月)

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