1. 箔押し職人 シミズ

職人

「押せないものは、生きているものだけ」

土屋鞄のものづくりを支える、さまざまな日本の職人技をお伝えします。
【箔押し】シミズ篇


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創業96年、シミズにしかできない老舗の技術

年季の入ったプレス機と、壁に並ぶ年代物の活字の型が創業96年の歴史を感じさせるシミズの工房。3代目の清水康夫さんの祖父が、明治43年に創業した当時の面影を残すこの工房で、革製品にロゴマークなどを入れる型押しの技術を代々受け継いでいます。

「祖父の代から浮き出し加工が得意でね。“うちでしかできない技術”があるんです」

仕上がりの美しさを追求し、あえて失敗のリスクが高い裏から型押しする難しい技術は、シミズでしかできません。そのため、ほかで無理だとさじを投げられるほどの仕事が、清水さんのもとへと舞い込むこともしばしばあるといいます。

0.0何mmの世界を見極める、天性の職人技

浮き出し加工に欠かせないのが、型。そのおおもとになる下型づくりは、0.0何mmの単位が仕上がりを左右する、最も神経を要する作業。清水さんの天性の感覚と、長年の経験だけが頼りになります。これをもとに雄型・雌型(凹凸型)ができます。その型をさらに微調整するクオリティの高さは業界でも名高く、直接指名が入るほど。
しかし清水さんは「急いで良いものはできない」と、急な仕事は断ることもあるそう。
「今日ブドウを持ってきて、明日ワインにしてくれ、と言われも無理でしょ?熟成の時間が必要なんです」

職人

雄・雌型に革を挟んでプレスする浮き出し加工は、「圧力・時間・温度」の3要素すべてのバランスが取れなければ、きれいに仕上がりません。一見シンプルな作業のようで、時間とともに浮き出しが潰れてしまったり、革の厚さや素材により仕上がりは千差万別。そのため、革の性質を熟知する必要があります。

「よくきれいに浮き出しが出ますね、と言われますが“出る”のではなく“出す”のです」

その言葉には、浮き出しにかける熱い想いとこだわりが込められています。

(左)雄型。 (右)型と機械、そしてひとの手によって、ロゴマークがくっきりと浮かび上がる。

工房

(左)年季の入った金銀の箔を貼る箔押しの機械は、まだまだ現役。
(右)3台の機械には愛着を込め、「ポルシェ」・「BMW」・「ベンツ」と命名。

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会社の命であるロゴマークにかける、プライドと情熱

「ロゴマークは会社の顔であり、命。だからこそ、私はこの仕事に誇りと厳しいプロ意識があるんです。ほかより高いと言われるけど、高いなりの技術と絶対ミスをしない自身があるから」と、迷いのない目で語る清水さん。
「土屋鞄さんのロゴマークの場合、包丁の切れ味を表現した細いラインをきれいに出すのが難しくてね。ここは一歩間違えると革が切れてしまうから、型の素材選びから気を使うんだ」

「押せないものは、生きているものだけ」と、静かな情熱で型押しについて語る清水さんの言葉からは、ご自身の仕事に対するプライドと愛情がひしひしと伝わってきました。

工房

有限会社シミズ
〒111-0042 東京都台東区寿2-3-1

創業96年。現在3代目で職人歴25年の康夫さんが、見習いの小林さんとともに型押しの技術を受け継ぐ。オリジナル商品の製作やオーダーメイド品も手がけるなど、型押しの技術を生かして活躍している。


(2006年7月)

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