1. 革漉き職人 青葉革漉

職人

「毎日がコンマ数ミリの真剣勝負です」

土屋鞄のものづくりを支える、さまざまな日本の職人技をお伝えします。
【革漉き】青葉革漉工業篇


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鞄づくりを陰から支える“縁の下の力持ち”

できたての革は、そのままではあまりに厚すぎるため、ちょうどいい薄さになるまで革を削ります。ところが、できたての革は成人男性の背丈ほどの大きさがあるので、それを薄く加工するには大きな機械が必要。そこで機械を置けない小さな工房は、大型の機械を持った専門の職人に革の加工を依頼します。その専門の職人を「革漉き(かわすき)職人」と言い、鞄づくりを陰から支えている“縁の下の力持ち”的存在です。

青葉革漉は、難しいとされるヌメ革の漉きが得意な、革漉き職人集団。「革漉き」作業について、うかがいました。

職人

まるでひとつの生き物のように動く、革漉き機

青葉革漉の工房にお邪魔してまず目についたのは、幅3m近くはある3台の大きな革漉き機(バンドナイフ・マシーン)。どれも見るからに年季の入った、古そうな機械ばかりです。

「みんな40、50年以上は使われているものですが、まだまだバリバリの現役なんです」
なかではギリギリと大きな歯車がいくつも軋み、なにやら金属のベルトのようなものがすごい勢いで送り出されています。「このどんどん送り出されているのが、革を漉きとる刃なんです。先を研ぎながらぐるぐる回っているので、常に新しくて鋭い刃が革に当たる構造になっているんですよ」と真山さん。各部分がうごめく様子は、大きなひとつの生き物の内部を見ているかのようでした。

工房

一見シンプルな作業の中に秘められた、繊細で奥深い匠の技

革漉きの作業は、2名の職人がこの大きな漉き機を挟んで行われます。ひとりが平積みになっている半裁革を漉き機の入口に入れると、反対側の口から漉き上がった革が出てきます。それをもうひとりの職人が受け取り、後ろの台にまた平積みという具合。1枚また1枚と、大きな革が漉かれていきます。

作業は簡単に言うとこれだけですが、成人男性の身長ほどもある革を一日に何十枚も扱うのですから、かなりの重労働。「昔は50kgくらいの束をひとりで担いだものでしたよ」というお話からもわかるとおり、体力に自信がないと厳しい仕事。しかしさらにお話をうかがってみると、本当に大変なのは、もっと別の部分にあることがわかりました。

それは「革の見極めと機械の微調整」です。革は厚さがほんの少しでも違うと、質感や雰囲気が変わってしまいます。ですので、土屋鞄では革の厚さを0.1mm単位で指定しますが、これはわずかな狂いも許されないということ。
「依頼された厚さと革の種類・状態によって、漉き機のあらゆる部分を微妙に調整しなくてはいけません。この見極めと調整が正確かつ即座にできることが、優れた革漉き職人の絶対条件なんです」と、真山さんは力説します。

漉き上がりの状態を常に厳しい目でチェックし、瞬時にコンマ数ミリ単位の調整を施す。素人目には一見、ただ流れ作業でやっているように見えてしまう革漉き作業ですが、そういう外からは見えにくいところに、大変奥深い匠の技が隠されているのです。

職人

(左)革の不良部分を見極め、即座に革包丁で除去。
(右)革は尻の部分から漉く。革を入れる力加減が難しい。

工房

(左)送る速度を調整しつつ、同時にしわも伸ばす。
(右)わずかな厚みの変化を察し、調整器で整える。

職人

「タンナーさんが精魂込めてつくった革を鞄職人さんが求めるベストの状態に整えて、確実にお渡しするのが私たちの仕事なんです」と、真山さんは革漉きの仕事について語ります。
「表に出ない仕事ですけれど、私たちはそんな革漉きという仕事を心から誇りに思っています」
革漉き職人は、革をつくるタンナーと鞄職人とを結ぶ大事なつなぎ役。漉きの質が鞄の出来を大きく左右するので、鞄職人にとって腕利きの革漉き職人は大切なパートナーなのです。

40年近くに及ぶ豊富な経験に基づいた熟練の腕と目で、高いクオリティの革漉きを確実に提供し続けてくれる青葉革漉。このように高い技術力と抜群の安定感をもって陰からしっかりと支えてくれる匠の存在があってこそ、安心して鞄づくりを続けることができるのです。

職人

青葉革漉工業株式会社
〒131-0042 東京都墨田区東墨田2-2-21

創業1971年。代表取締役の真山さんを含め、職歴40年近い熟練職人を6名も抱える革漉きのスペシャリスト。分厚いヌメ革の大漉きからコンマ数ミリ単位の極薄革漉きまでをこなす高い技術力を誇る。


(2006年11月)

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