1. No.30 「目線」を合わせて

コツコツつくって50余年の工房を、ウロウロとしてみます。
つくる職人、使う道具、できあがったものに近づいたり離れたりしながら、
工房の音や声、匂いを綴るコラムのような、ちょっとしたよもやま話です。

2019/8/19

「目線」を合わせて

静かな呼吸で心落ち着かせて。力まず、優しく、すーーーーーっ。

工房をのぞくと、何やら高い台の上で手を動かす職人の姿が。彼の表情は真剣そのものです。瞬きをせず、真っすぐ見つめて。力強い眼差しの先には、ローラーの上を滑るように動くパーツがあります。肩の力を抜きながらも、パーツを持つその指先からは心地良い緊張が伝わってきました。

これは、コバ塗りをしているところ。革の断面をきれいに仕上げるための工程です。小さなパーツは高い台、大きなパーツは低い台で。椅子も上げ下げを繰り返して。同じコバ塗りの工程なのに、彼は相手に合わせて高さや姿勢を変えているようです。

手に取るパーツのサイズは、大小さまざま。革の性格も異なります。一つひとつに個性があるからこそ、「つくるものに合わせて、目線をそろえていきたい」。その思いから生まれたつややかな輪郭は、どこか嬉しげな表情に見えました。


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