1. No.29 職人の背中の、小さな「革ゼッケン」

コツコツつくって50余年の工房を、ウロウロとしてみます。
つくる職人、使う道具、できあがったものに近づいたり離れたりしながら、
工房の音や声、匂いを綴るコラムのような、ちょっとしたよもやま話です。

2018/11/26

職人の背中の、小さな「革ゼッケン」

「ここは、こうやってね・・・」「なるほど」。内容を確認しながら並んで作業をしている、ベテラン職人と若手職人の背中にご注目。エプロンの紐が背中で交差しているところに、不思議なものがちょこんと付いています。実はこれ、土屋鞄の職人の多くが愛用している革のアジャスター。なんだか、職人の“ゼッケン”みたいですね。

エプロンは、土屋鞄の職人たちにとって欠かせない仕事着。革のくずがかかったり、機械のオイルが跳ねたり、コバ塗りの塗料をうっかり付けてしまったり・・・エプロンのおかげで汚れることが気にならず、作業に集中できるのです。でも、一つだけ悩みが。作業中に、肩に掛かっている紐がずり落ちることがあるのです。

そこで知恵者が、余りの革でX字型に紐を通すアジャスターを「発明」しました。上に動かすと肩紐が締まってずれにくく、下に動かせばゆるんで脱ぎやすくなる優れもの。その機能性とお洒落さで、工房中に広まりました。今では鞄やハートの形など、独自のデザインもちらほら。工房ではこんなところにも、楽しい創作があるのですね。


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