1. ストーリー・土屋鞄 最終話
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最終話

手仕事に寄り添う「贈り物」を

初めて訪れたときには、初夏の爽やかな空気に包まれ、山の緑も鮮やかだった気仙沼。
今回、再び職人・阿部とデザイナー・丸山がその地に足を踏み入れると、そこはすっかり秋の装いに。
広く澄み渡る空に、ちらほらと色付き始めた木々・・・。3度目の訪問となったのは、10月も半ばのことでした。

そう、ついに約4ヶ月にわたって、私たちが仕上げてきた「贈り物」を、編み手さんたちにお渡しする日がやって来たのです。

2人が向かったのは、「気仙沼ニッティング」直営店の「メモリーズ」。
そこで、ほがらかに出迎えてくれたのは、編み手のリーダー・じゅんこさんと社⾧の御手洗さんです。

しばらく、みんなであれこれとおしゃべりを楽しんだ後、いよいよ「贈り物」を手渡す時間に・・・。

モカ色のリボンで包んできた「贈り物」は、2つ。
「どうぞ使ってくださいね」と、まずは1つ目の「贈り物」を阿部からじゅんこさんにお渡しします。

「わあ~ ! すご~い ! 」と、満面の笑みで受け取ってくれる、じゅんこさん。

とても優しい手つきでリボンをほどき、ゆっくりと箱を開けていきます。

最初に手にしたのは、2人からの直筆メッセージを添えた、手づくりのカード。
ちょっとしたサプライズの気持ちを込めて、このカードを仕込んでみたのです。
「うれしいなあ~。こんなにおしゃれなカードまで入っているなんて・・・ ! 」

そして、箱の中から姿を現したのは、編み手さんたちに似合うようにと、角に丸みを付けて、やさしい雰囲気に仕上げた「箱型の道具入れ」です。
それを手に取ると、じゅんこさんは愛でるようになで始めました。

「中も見てみますね」と蓋を開けると・・・、

「わあ、きれいな色 !」
「私たちのネイビーのニットと同じ色ですね ! 」と、
「気仙沼ニッティング」のニットの定番色から選び、仕立てた内装のネイビー色に、2人の歓声が上がります。

「私の道具入れは、これまでお菓子の空き箱を使っていたし、他の編み手たちもそうでしょ。だから、こんなに立派な道具入れを頂いてしまって良いのかしらという気持ちと、早く使ってみたいという気持ちの両方があって・・・」と、微笑むじゅんこさん。

「ぜひ編み物道具を入れてみてください」と丸山がリクエストすると、じゅんこさんは愛用の編み物道具を早速、入れてみてくれました。

レース糸や目数リング、糸切りハサミなど、細かな道具がきれいに収まった道具入れ。
この姿を日々想像しながら、その寸法や細かなつくりの仕上げに試行錯誤を重ねてきた阿部と丸山は、収まるべきものが収まる道具入れを前に、なんだか、心がじーんとなるような、小さな感動に包まれていました・・・。

続いて、2つ目の「贈り物」を手にしたのは、御手洗さんです。

「開けるの、緊張する~」と言いながら、リボンをほどき、箱の中から出てきたのは・・・、

ころんと可愛い「巾着型の道具入れ」です。
「すご~い ! ふんわりした形で、編みひもも素敵。革も編めるんですね」と御手洗さん。
阿部が手編みにこだわった革ひもも、喜んでもらえたよう・・・。

「中も赤色で可愛い ! 革のいい匂い~ ! 」と、とびっきりの笑顔を見せてくれます。

「この巾着は、めくって使うこともできるんですよ」と、こだわったつくりの部分を伝える丸山。

「わあ、すごい~ ! 編み手さんたちが使いやすいように、考えてくれたんですね。中身もたっぷりと入りそうだから、何を入れようかと考えるのも楽しくなるなあ~」

「こうやって口をきゅっと結べば、巾着になってそのまま持ち運べるから、いつでもどこでも編み物が始められて、他の編み手さんたちもきっと喜びますよ」と太鼓判を押してくれました。


そして、「早く使ってみたい」と話していたじゅんこさんに、せっかくなので、その場で道具入れを使いながら、編み物をしてもらうことに !

「なんだか感激して、さっきから鳥肌が立っているの。いつもやっている編み物なのに、緊張する・・・」と、くしゃっと笑いながら、自分の目の前に道具入れを置いて準備をする、じゅんこさん。

編み針を持って手を動かし始めると、じゅんこさんのその優しい手は、シュシュシュっと無駄のない動きで、リズムよく進んでいきます。
少しずつ、編み地ができていくにつれ、じゅんこさんの周りには、すーっと澄んだ空気が流れ始めたような・・・。

普段はとても穏やかで、周りの人を包み込むあたたかな雰囲気を纏うじゅんこさんですが、編み物を始めた途端、どこか緊張感のある、職人の顔つきに。

そんなじゅんこさんが私たちの仕立てた「道具入れ」を使ってくれている光景。それを見るのを楽しみに「贈り物」づくりに励んできた阿部と丸山にとって、それを目にするのは、なんだか言葉では言い表せない、心がじんわりと温まっていくひとときでした。

そんなとき、じゅんこさんも編む手を止めて、切り出したのです。

「今回、土屋鞄の職人さんたちにお会いできて、工房でその仕事ぶりも見せていただいて。自分の甘えていた気持ちにビンタをされたような気持ちになったんです。日々の仕事や家事に追われて忘れていた、ものづくりの原点を思い出させてくれたというか・・・。コツコツと丁寧にものをつくる。それを見せてくれた土屋鞄の職人さんたちのプライドに負けないように、私も頑張っていきますね。今日、こうして贈り物をいただいて、心からそう思いました」と、晴れやかな表情を見せます。

使う相手のことを想いながら、丁寧にものをつくる。そのうれしさを互いに共有できた、ひとときでもありました。

「手仕事に励む相手を、手仕事で応援したい」。
その想いから、編み手さんたちのためにつくったのが、今回の“道具入れ”です。
着る人をぽかぽかと温めるニットをつくる編み手さんたちの手仕事の日々に、いつも寄り添いながら、あるときは力強く励ましたり、あるときは共にふ~っと深呼吸をしたり。
そして、あるときは一緒に喜びをかみ締めながら、編み手さんたちが次の一歩を軽やかに踏み出していける力になる。そんな存在になれたらうれしいなあ、と思うのです。



最終話までお読みいただき、ありがとうございました。
これで「贈り物」づくりのストーリーはいったん終了となりますが、
12/14(金)に、きっと皆さまにも喜んでいただける
新たなお知らせがあります。
どうぞ楽しみにお待ちください。


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