1. ストーリー・土屋鞄 第4話
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第4話

⼩さなところにも、こだわりを持って

編み手さんたちに試作品を見ていただくため、再び気仙沼を訪ねたデザイナー・丸山。
東京に戻って早速、職人・阿部に編み手さんたちと嬉しいやりとりがあったことを伝えました。

「編み手さんたち、予想以上に気に入ってくれましたよ。『持ち運びができて、一回一回開け閉めせずに使える形が、使いやすそう』『箱型も巾着型も形が可愛い』と喜んでくれて。見てもらうまでは、どんな反応かなとドキドキしていたので、なんだかホッとしましたね」と笑みをこぼす丸山。

さあ、ここからは、編み手さんたちにいただいた意見を取り入れながら、試作品のブラッシュアップです。

贈り物をつくって届けるまでの過程を山登りに例えるならば、頂上までの歩みは、あともう少し。
気に入っていただけたことも弾みとなり、気持ちを高めた二人はラストスパートをかけていきます。

3種類用意していた試作品のうち、「ロール型」は残念ながら道具⼊れには使いづらいとのことで、ブラッシュアップは「箱型」と「⼱着型」の2種類に。当初は1種類まで絞る予定でしたが、編み手さんも私たちも決め切れず、最終的にこの2種類を「贈り物」に仕上げていくことにしました。

ここで⼤きく変更することになった点が、もう1つ。
それは、「内装」に使う素材(ピッグスエード)の⾊を変えることです。

実は、このアイデアは外装の革が「オイルヌメ革」に決まったときから、みんなで温めてきたもの。

編み手さんたちに贈るせっかくの「贈り物」なので、道具入れのどこかに「気仙沼ニッティング」にゆかりのある色を入れて、驚かせたい。そう思ったのです。

「気仙沼といったら、やっぱり海の色が良いかな。お店の窓から眺めた海も、すごくきれいだった」
「セーターの赤や黄色も鮮やかで、印象的だったな。元気の出る色だったよね」

そんなふうに、気仙沼を訪れたときの風景を思い出しながら、内装の色を考え、最終的に決まったのが「ネイビー」と「赤」の2色です。

どちらの⾊もオマージュを込めて、「気仙沼ニッティング」さんが⼿掛けるセーターの定番色の中からセレクトしました。選んでみると、「ネイビー」は熟練の⼿仕事のように、落ち着きと深みのある⾊。「⾚」は編み⼿さんたちのように明るく、奥⾏きのある⾊です。

「道具入れを開けたときに、わあ ! と笑顔になってもらえるといいなあ」と、丸⼭は期待いっぱい。

さて、阿部は、試作品のブラッシュアップに取り掛かります。編み手さんが実際に使うところを想像しながら、もっと使い心地が良くなるように、細かなつくりを直していきます。

「もっとポケットが付いていたら、道具を細かく整理できて使いやすい」という編み⼿さんたちの声を受けて、2型ともポケットの数を増やすことにしました。

「箱型」はふたの裏側の部分に、新たに差し込みポケットを追加。編み物をしながら使う、⼩さな糸切りハサミや短い定規のほかに、ちょっとしたメモなんかを挟むことができます。

⼀⽅の「⼱着型」は、元々内側に2つのみだったポケットを、6つに増やしました。「もうひと回り⼤きいと、もっと使いやすい」との声もあったので、こちらはサイズ⾃体もひと回りアップ。マチ幅もしっかりとあるので、編み物道具だけでなく、⽑⽷⽟や眼鏡ケースなどもすっぽりと収まるようになりました。

また、丸⼭がこだわって実現させたのは、上部の⾰をめくって使える仕様にすること。底の部分に安定感を持たせることで、⾰をめくれば、バスケットのようにも使えるのです。

「ある編み⼿さんが、編み物道具を⼊れたプラスチックのBOXを、取っ⼿の付いたエコバックの中に⼊れて使っていたんです。バックの上部をめくりながら使うのを⾒て、とても使いやすそうだし、持ち運びにも便利だなと思って。それをヒントに、考えたんですよ」と丸⼭。

最初の試作品づくりのときにも苦労した⼝の部分は、今回もさらに改良を。革ループに紐を通すつくりに変えることで、開け閉めはよりスムーズに、⼝もしっかりと閉まるようになりました。

そして、「贈り物だから、小さなところにまでこだわれたら良いよね」と話す阿部の提案で、口に通すひもも革ひもに変更。3ミリ幅の細い⾰を編み込んでつくった阿部のオリジナルです。

こうして、見た目も機能性もブラッシュアップされた道具入れ。
「ようやく自分たちも納得のいくものが完成しましたね」「使い心地は、さらに良くなったんじゃないかな」と言葉を交わし合う丸山と阿部。

次回はいよいよ、この完成品を「贈り物」として、気仙沼の編み⼿さんたちの元へお届けします。
「早く編み手さんたちに見てほしい」と胸は膨らむばかり・・・ !

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