1. ストーリー・気仙沼ニッティング 最終話
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最終話

あたたかさのリレー

11月のある日、気仙沼ニッティングの編み手のじゅんこさんと、社長の御手洗は、西新井にある「土屋鞄製造所」の工房へむかいました。

気仙沼ではもう初雪もふりましたが、東京はまだぽかぽかとした陽気。
「こちらは、あたたかいですね」
「本当に。東京と気仙沼では、冬が来る時期がずいぶん違うんですね」
そんなことを話しながら、工房の階段をあがります。

今日はいよいよ、土屋鞄の職人さんたちに「贈り物」をお持ちする日です。
工房には、気仙沼にも何度もお越しくださっている阿部さん、それから、ランドセルを担当する塚本さん、吉村さん、岸本さんが集まってくれました。

御手洗が、みなさんの前に、「贈り物」を出します。
「大変お待たせいたしました。気仙沼ニッティングの編み手から、土屋鞄の職人さんへの贈り物は、こちらです」

「わ、かわいい ! 」
「ネックウォーマーだ ! 」

編み手のじゅんこさんが編んだ「職人さんのネックウォーマー」をお見せすると、歓声が上がりました。
よかったら、触ってみてください。

「すごい ! やわらかい ! それにきれいな色」
「さわると、気持ちがいい」
「この素材は、なんですか ? 」

実は、これはカシミヤなのです。気仙沼ニッティングが今年の新作にも使っている、色鮮やかなカシミヤで、土屋鞄の職人さんのために、ネックウォーマーを編みました。

「こんな色のカシミヤがあるの ? 」と思われた方も、いるかもしれません。そうなのです。実はいままで、こうした発色鮮やかなカシミヤはありませんでした。なぜなら、カシミヤの原毛は茶色がかっており、そのまま染めてもくすんだ色になってしまいます。そして、カシミヤの繊維は弱いので、一度白くしてから染めようとすると、繊維がいたんでしまうのです。それが最近、日本のカシミヤメーカーさんが、カシミヤをいためることなく鮮やかな色で染める技術を開発し特許を取られました。その技術を使って染色し、さらに手編みできるように特別に紡績していただいたのが、このカシミヤなのです。

また、カシミヤは、ただ編むだけではふわふわにはなりません。編んだあと、もうひと手間「縮絨(しゅくじゅう)」と呼ばれる工程を経て、ふわふわになります。

▲上が、前のカシミヤ。下が縮絨後。

・・・と、つい張り切って、うんちくが長くなってしまいました。

とっておきのカシミヤの糸で編んだ、「職人さんのネックウォーマー」、さぁ、気に入っていただけるでしょうか。

「すごい ! カシミヤなんですね。つけてみても、いいですか ? 」

さっそく、ランドセル職人の塚本さんが、
赤いネックウォーマーを試着してくれました。

「あぁ、やわらかくて、気持ちいい」
と塚本さん。

「仕事のときはもちろん、休みの日も、たくさん使います ! 」
と笑顔で言ってくれました。

「どれどれ、私も」とネイビーのネックウォーマーをつけた阿部さんは、

「うむ、あたたかいし、やわらかいな。でも、私にはちょっと、小さいかな」
と苦笑い。たしかに、阿部さんには、すこし小さそうです。

でも、ご安心ください。
このネックウォーマーは、お好きな色とサイズで、編ませていただきます。
阿部さんには、ワンサイズ大きく、編ませていただきますね。

「そっか、好きな色を選べるんですね ! 私はなに色がいいだろう」
と、吉村さん、岸本さんも悩みます。

「ネイビーがいいなと思ったけど、黄色もかわいい ! 」
「ほんとうだ。私、黄色ってつけたことないけれど、いいですね」
「阿部さんは、はっきりした色が似合いそうですけど、
ネイビーやグレーもいいですね」
と、たのしい色選びがはじまります。

塚本さんだけは、
「私は、赤 ! 」
と心が決まっているようです。

阿部さんは、縮絨前と縮絨後のネックウォーマーを見比べて、
「こんなに変わるんだなぁ、不思議なもんだ」
と感心しきり。さすが、視点が職人さんです。

みなさんに、実際に職場でも使ってみていただきました。
いかがでしょう ?

まずは、岸本さん。ミシンを掛けるときに、使ってもらいます。
「あったかいです ! ミシン掛けのときも、じゃまになりません」

次に、塚本さん。塚本さんが作業される様子を、後ろから、じゅんこさんと御手洗が見つめます。

あんまり見つめられて、ちょっと恥ずかしそうな塚本さんでしたが、
「すごくいいです。私は、もうちょっと小さくてもいいかな」

最後に、吉村さん。
「とってもあたたかいです。たっぷりしているけれど、これぐらいがいいかな。
これ以上小さいと、首が動かしにくいかもしれないので。
これぐらい余裕があって、好きな形に自分で調整できたほうが、使い勝手がよさそうです」

なるほど。工房で作業するときに使ってもらうには、あまりジャストフィットにさせすぎず、そのときの自分の体勢にあわせて、自由度高く形を決められる方が使いやすいようです。

職人さんは、人によって仕事をするときの体勢も違うので、やはり、好きなサイズをお選びいただき、編ませていただくのがよさそうですね。
ひとつひとつ、編み手さんが手で編むものだからこそ、使う人にあわせて調整できるのが、編み物のいいところです。

とっておきのカシミヤで編んだ「職人さんのネックウォーマー」、
みなさんにお気に召していただけて、ほっとしました。
そして、あらためて、幸せな気持ちになりました。

工房に訪れた11月のこの日、東京はまだぽかぽか陽気でしたが、これから東京もどんどん寒くなっていくことでしょう。そんな中、ランドセルの職人さんたちは、来春の子どもたちの入学式に間に合うようにと、冬もずっと工房で作業をします。

子どもたちのために、心をこめて手仕事をするランドセル職人さんたちが、少しでも冬をあたたかく過ごせるように。私たちも力になれたのなら、こんなにうれしいことはありません。
そしてきっと、職人さんたちが、あたたかな気持ちでつくったランドセルは、それを使う子どもたちのことも、あたたかく守ってくれることでしょう。

つくる人から、使う人へ。
あたたかな気持ちが、ずっとリレーしていきますように。

東北の港町、気仙沼から、願っています。



最終話までお読みいただき、ありがとうございました。
これで「贈り物」づくりのストーリーはいったん終了となりますが、
12/14(金)に、きっと皆さまにも喜んでいただける
新たなお知らせがあります。
どうぞ楽しみにお待ちください。


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