1. ストーリー・気仙沼ニッティング 第3話
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第3話

あの人も、この人も、よろこんでくれるもの。

夏も終わろうとするある日、気仙沼ニッティングの御手洗は、足立区・西新井の「土屋鞄製造所」の工房へむかいました。

土屋鞄の職人さんにお贈りするものについて、編み手のじゅんこさんと御手洗で相談し、「くつしたは、どうかしら」と思ったものの、本当にそれが「いい贈りもの」なのか、ちょっと自信がありません。それで、直接職人さんの意見をお伺いしようと、もう一度お訪ねすることにしたのでした。

なぜ自信がなかったか。

それは、土屋鞄でランドセルをつくる職人さんのお仕事は、工程ごとに分業制になっているため、「人によって、作業の仕方が違うから」でした。ランドセルの工房では、床に座って仕事をしている人もいれば、椅子に座ってミシンを踏む人や、立ち仕事の人もいます。工房の中を動き回って仕事をする人もいれば、一日中ひとところにじっと座っている人もいます。

なので、ある人にとっては使いやすいものも、別の人にとっては使いにくい、ということが、あるかもしれません。でもせっかくなら、みんなによろこんでもらえるものを、お贈りしたい。

そんな思いから、もう一度工房を訪ね、今度はいろんな工程を担当する職人さんに、お話を伺うことにしました。

この日、お話しを聞かせてくださったのは、先日気仙沼にもお越しくださった阿部さんと、3人の職人さん。塚本さん、吉村さん、岸本さんです。

塚本さんは、ランドセルのパーツをつくるチームのリーダーをしています。吉村さんは、ランドセル本体を組み立てるお仕事。岸本さんは、ランドセル本体の背胴部分をつくるお仕事をしています。

まずはみなさんに、手編みのくつしたを、見ていただきました。

「わーーーーーー ! 」
「かわいいーーーーー ! ! ! 」
「あったかそう ! ! ! 」

と、歓声が上がります。

「ひとつずつ編んでいくので、色は好きなものをお選びいただけたらいいなと、思っています。たとえば、ここのストライプを好きな色にすることもできますし、つまさきや、かかとだけ色を変えることもできます」

と御手洗が伝えると、

「わぁ、それはうれしいです。なに色にしようかな」
「でも、このままの色もかわいいなぁ」

とみなさん、楽しそうに、悩まれます。

「・・・でも、」

と、塚本さんが、遠慮がちに、
ちょっと残念そうな表情で、切り出しました。

「座って仕事をしている職人は、足も冷えるので、きっとこのくつしたは重宝すると思います。
ただ、私は、パーツのチームのリーダーをしているので、工房のあちこちを、歩き回らなくてはいけなくて。
いつもスニーカーをはいているので、その下に、厚手のくつしたをはくのは難しいかもしれない」


すると、岸本さんも、言いました。

「私は、よく床に長く座り込んで仕事をします。とくに冬は足が寒いので、こんな手編みのくつしたがあったら、すっごくうれしいです。でも、くつしたのまま作業場を歩くこともあるので、汚れてしまわないかとか、すべらないかとか、ちょっと心配です」

うーむ、なるほど。

職人さんたちに、工房でつかっていただくからには、安全性や使いやすさは、なにより大切です。

そしてできれば、みんなにとってうれしいものを、贈りたい。

くつしたは、却下です。


そしてもう一度、工房を見学させていただきました。
「みんなにとって、冬もあたたかく過ごせて、工房で使いやすく、安全なものって、なんだろう」
と考えながら。

職人さんたちは、口々に、
「冬は、寒いですよ」と言います。
「工房は、できあがったランドセルをトラックに荷積みする仕事もあるから、
外からの風も入ってきて、冷えるんです」と。

でも、どこをあたためたら、いいのでしょう。

手ぶくろをすると、仕事がしにくい。
マフラーは、機械に巻き込まれたら危ない。
くつしたは、立ち仕事の人は使えないし、すべると危ない。
暑くなっても脱ぎ着がしにくい、セーターも無理です。

なかなかの、難問。

悩んでいると、
吉村さんが、ぽそっと言いました。

「私は、床の上であぐらの姿勢で仕事をしているのですが、
足の上にエプロンが掛かりますし、ランドセルも抱きかかえている感じなので、
下半身は意外とあたたかいのです。
それより、上半身が冷えるかなぁ」

なるほど。

職人さんたちは、作業性を考えて、
仕事中は、動きやすいトップスにデニム地のエプロンをしています。
セーターを着ることは難しくても、
ひと工夫で、あたたかく過ごしてもらうことができるかも・・?

御手洗は、気仙沼に帰って、
もう一度編み手のじゅんこさんと相談することにしました。


さて、みなさんだったら、土屋鞄の職人さんに、なにをつくるでしょうか。
よかったら、一緒に考えてみてください。

私たちは、ひとつ、思いつきました。
みなさんが考えたものと、同じかな?

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