1. ストーリー・気仙沼ニッティング 第2話
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第2話

職人さんが、あたたかくいられるように。

「気仙沼ニッティング」の編み手のリーダー・じゅんこさんと、社長の御手洗は、西新井にある「土屋鞄」の工房の見学を終えて気仙沼に戻り、相談をはじめていました。

土屋鞄の職人さんたちに、どんなものをつくってプレゼントをしたら、よろこばれるだろう。

ふたりの頭の中にあったのは、土屋鞄の工房で出会った、ランドセルをつくる職人さんたちの姿でした。

土屋鞄の職人さんたちは、こどもたちのランドセルを、手仕事でつくっています。
一つのランドセルができるまでには、たくさんの工程があります。革を裁断する仕事、肩ベルトやポケットなどの部品を縫う仕事、ランドセルのふた(かぶせ)を貼る仕事、全部のパーツを組み合わせミシンで縫ってランドセルの形をつくる仕事、検品の仕事…。土屋鞄のランドセル一つには、おおよそ150個以上のパーツが使われているそうですから、いかにたくさんの工程があるかが、想像できます。

その工程一つひとつに、高い技術と専門性が求められるので、土屋鞄のランドセルは、分業制でつくられています。たくさんの職人さんたちの手を経て、ようやく、一つのランドセルが完成するのです。

分業制ということは、職人さんは、一つの仕事を繰り返しやることになります。たとえば、ランドセルの背中の部分と本体を張り合わせる工程の職人さんは、一日中ずっと、同じ姿勢で床に座り、作業を続けます。それは、なかなか大変なことです。職人さんはランドセルを何本もつくりますが、こどもたちにとっては、たった一つのランドセルです。だから、一つひとつ集中して、丁寧に仕事をしていきます。

真剣なまなざしでランドセルと向き合う職人さんの姿は、すがすがしく、心地よい緊張感がありました。


じゅんこさんと御手洗は、そんな職人さんたちの姿を思い出しながら、考えました。

「ランドセル職人さんたち、かっこよかったですね」
「ほんとうに。凛々しかったです」
「でも、ずっと同じ姿勢で仕事をしているから・・」
「はい」
「冬は、身体が冷えるかもしれないですね」
「はい、そう思いました。冬は、寒いかもしれない」

東北の冬は寒いからか、東北に住む人たちは、人一倍、
「あたたかくあること」を大切に思っている気がします。
周りの人が、寒い思いをしていないか、
あたたかくいられているか、とても、気にかけるのです。

気仙沼ニッティングの編み手たちも、
いつも「着る人が、あたたかくいられますように」
と願いながら、ニットを編んでいます。

土屋鞄の工房を見学したじゅんこさんと御手洗も、
「こどもたちのためにランドセルをつくる職人さんたちが、
 冬も、あたたかく仕事ができるように、役に立てたらいいなぁ」
と、思ったのでした。

でも、なにをつくれば、
その役に立てるでしょう?

一つひとつ、思いつくものを、挙げていきます。

手ぶくろ?

それは、むずかしそうです。
手ぶくろをつけていたら、きっと職人さんたちは、
革の感触が手で感じることができなくなってしまうでしょう。

マフラー?

それは、きっとダメです。
職人さんは、革をすく機械や、
大きなミシンを使うことがあります。
マフラーをしていて、万が一巻き込まれてしまったら、大変です。

セーターはどうでしょう。

うーん。土屋鞄の職人さんは、汚れてもいいように、
工房ではデニム地のエプロンをすることになっています。
エプロンの下にセーターを着たら、脱ぎ着がしにくいから、
身体を動かして暑くなったときに、きっと不便です。
なかなか、妙案が浮かびません。

そうだ、くつしたはどうだろう!

毛糸のくつしたは、すごく、あたたかいのです。
そして、足の先があったかいと、
全身がポカポカとあたたかくなります。

床で、くつを脱いで作業をしている職人さんたちも、
毛糸のくつしたをはいたら、
きっと冬でもあたたかくいられます。

じゅんこさんと、御手洗は、土屋鞄の職人さんたちに、
くつしたを編んでプレゼントすることを思い立ちました。
思いついて、「これはいいアイデアかも?」と、
ちょっと、うきうきしました。

・・・でも、ちょっとだけ、不安もあります。

毛糸のくつしたをはくことで、
職人さんのお仕事に、差し障ることはないだろうか。

仕事場で使っていただくものなので、
仕事の邪魔にならないことは、なにより大切です。


毛糸のくつしたをはいて、作業の邪魔にならないか。
そこは、職人さんに聞いてみないと、
わかりません。

そこで、気仙沼ニッティングチームは、
毛糸のくつしたを手に、
もう一度西新井の工房にお邪魔して、
ランドセルの職人さんたちにお話を伺うことにしました。

さて、職人さんたちの反応は、どうでしょうか。

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