1. ストーリー・土屋鞄 第2話
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第2話

編み手さんの喜ぶ「贈り物」を考える

7月初旬の気仙沼訪問をきっかけに、「編み手さんたちが喜んでくれる“贈り物”って何だろう」とそのアイデアを真剣に考え始めた職人・阿部とデザイナー・丸山。

今回の訪問は、贈り物づくりのヒントをもらうことが一番の目的ではあったものの、同じように手仕事でものをつくる編み手さんたちが、日頃どんなふうに仕事をしているのか。どんなこだわりを持っているのか。それを自分たちの目できちんと見られたことが、何より刺激をもらえる貴重な体験になりました。

「気仙沼ニッティング」が大事にされているのは、“編むことのうれしさが着る人に伝わり、何年も何代にも渡って愛されていくようなニットをつくる”こと。
そのため、全ての商品が手編みなのはもちろん、ファーストモデルの「MM01」については、オーダーメイドでつくられています。

オーダメイドの場合、一人ひとりのお客さまの体型や要望に合わせて編み図を描くことから始まりますが、どの商品であっても編み図の内容をしっかりと理解した上で、心を込めて編んでいく。それが編み手さんたちに求められる技術の基本です。

編み図を見るのは、今回が初めてだったという丸山。編み手さんに見せてもらうと、
「わあ、編み図って、こんなに細かく書かれているんですね。これを一人ひとりのためにつくるって、それだけですごいことだなあ」と驚きの表情を見せていました。

編み手のリーダーであるじゅんこさんによると、編む上で一番気にかけるのは寸法なんだそう。
「お客さまのサイズにぴったりと合う温かいニットをつくるからこそ、心地よく着てもらえるし、大事にしてもらえると思うんです」とじゅんこさん。
あとは、編み目がそろい、ふっくらと美しい編み地になっているかどうか。それも手仕事だからこそ、大切にする点だと言います。

また、じゅんこさんや社長の御手洗さんとの話の中で、阿部が特に共感していたのは、自分たちが納得できる商品に仕上がらないと判断した場合、どんなに編み進んでいても途中で毛糸をほどき、必ず一からやり直すというこだわり。
「つくり手として、絶対に妥協はしないという姿勢が素晴らしいね」と感心していました。

他にも、耐久性と着心地の良さに優れるオリジナルの毛糸を使っていたり、
糸が切れたり、穴が空いたりしてもきれいに直せるように、ほどきやすい編み方にしていたりと、
一つの商品の中には、長く愛用してもらいたいからこその、小さなこだわりが詰まっています。

そんなふうに、気仙沼で編み手さんたちの仕事ぶりをしっかりと見せてもらった阿部と丸山は、「編み手さんたちに喜んでもらえる贈り物をつくりましょう」と、その思いがさらに強くなったよう。

そして、東京に戻って早速、贈り物の具体的なアイデアを考えていくための打ち合わせが始まりました。土屋鞄では、一つの製品をつくるにあたって、多くの職人やデザイナーなどが関わります。そのため、今回の打ち合わせにも阿部と丸山だけでなく、企画メンバーである他のデザイナーなども顔をそろえます。

最初に丸山が自分のノートにラフを描いて、みんなに提案したのは、編み針が一本ずつしまえる「編み針用のポーチ」。編み針は、編み手さんにとって大事な相棒だからです。

ただ、編み針用のポーチは、「手芸屋さんに行けば自分で買えるものだよね」「贈り物だから、“自分では買わないけれど、もらったら嬉しい”という意外性があると良いんじゃないかな」
そんなメンバーからの意見を受けて、残念ながらこのアイデアは無しに・・・。

他のデザイナーからも「ネックストラップポーチ」や「トレー」など、さまざまなアイデアが出ましたが、どこか決め手に欠け、なかなか贈り物の方向性は見えないまま・・・。

改めて、みんなで気仙沼に訪問した際に撮った写真や動画を見直したところ、新たに出てきたアイデアが「箱型の道具入れ」でした。

編み物には、編み針以外にも、実はたくさんの道具が使われていますが、マーカー(編み地の段数を数える安全ピンのような形のもの)やピンセットなど細々としたものが中心です。
そのためか、多くの編み手さんたちは、そうした道具をきれいに整理できるように、仕切りとポケットの付いた「箱型」や「がま口型」のポーチを道具入れにしていました。

興味深かったのは、本来編み物用につくられたわけではないそれらのポーチを、道具が出し入れしやすいように、それぞれが工夫して使っていたことです。

それをヒントに、「編み手さんそれぞれが工夫して使えるような『箱型の道具入れ』をつくってみたらどうだろう」「革でつくったら、きっとかっこいいのができそうだよね」
そう盛り上がり、最初の打ち合わせから約一ヶ月、ようやく贈り物の形が見えてきました。

阿部からも「箱型の道具入れは、面白いかもしれないね」と良い反応が !

ただ編み手さんたちにとって、箱型が一番使いやすい形がどうかは分からず、丸山からの提案で、他にも「巾着型」と「ロール型」もつくってみることに。
そして、3つの型で試作品をつくり、編み手さんたちに一度見ていただいた上で、最終的な形を決めていくことになりました。

次に考えたのは、どの「革」で仕立てるかで、私たちならではの贈り物にするための大事な素材です。

これについては、「Tone OILNUME」(トーンオイルヌメ)シリーズでおなじみの「オイルヌメ革」にしたいと、すぐにみんなの意見がまとまりました。

「オイルヌメ革」は土屋鞄の顔とも言える革である上、そのしっとりとした手触りと柔らかな風合いが、編み手さんたちの優しい雰囲気によく似合うこと。使えば使うほど手になじみ、色艶を深めていく。そんな経年変化も楽しめる素材が、贈り物にぴったりだと思ったからです。

さて、3つの型で制作する道具入れ。
革で仕立てると、一体どんな仕上がりになるのでしょうか。

この後は試作品をつくり、アイデアを形にしていきます。職人・阿部の腕の見せ所です。

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