1. ストーリー・気仙沼ニッティング 第1話
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第1話

西新井の、土屋鞄の工房へ

それは、東北の緑も濃くなって、だんだんと季節が夏に向かって進んでいく、6月のことでした。

「気仙沼ニッティング」の編み手のリーダー・じゅんこさんと、社長の御手洗は、東京へ向かいました。
場所は、東京都足立区の西新井。

「土屋鞄製造所」の工房を訪ねるためです。

土屋鞄の職人さんたちがどんなふうにお仕事をしているのか見て、どんなものをつくったら喜ばれるかを考えるために、じゅんこさんと御手洗は、土屋鞄に伺ったのでした。


この日訪ねたのは、土屋鞄の「西新井本店」です。
「西新井大師西」駅から、歩いて4分ほど。
ゆったりとした店内は、木と革のあたたかみが感じられます。

この店舗は、工房が併設されており、お店の奥で職人さんが「ランドセル」をつくっているのをどなたでも見学することができます。

自分が使うランドセルを、職人さんたちがつくってくれている様子を見ることができたら・・・。
きっとそのランドセルを背負う6年間、ずっと背中にやさしいものを感じられるのではないでしょうか。

「いいなぁ。私も、自分のランドセルをつくってもらっているところ、見たかったなぁ」
なんて話しながら、じゅんこさんと御手洗は、土屋鞄の工房を見学させてもらいました。

今回、工房をご案内くださったのは、職人の阿部さんです。

ベテランの阿部さんは、ふだんは、サンプル製作を担当されています。

新しい商品が出るときは、まず阿部さんが試行錯誤を重ねてサンプルをつくります。
それをもとに、たくさんの職人さんがその商品をつくることになります。

どうやったら美しい形に仕上がるか、どうすれば使いやすく丈夫になるか。
職人さんたちがつくるとき、どこに注意する必要があるか。
さまざまな角度から点検しながら、阿部さんは、サンプルを仕上げていきます。

じゅんこさんは、阿部さんの気持ちが少しだけ、わかる気がしました。
なぜならじゅんこさんは、「気仙沼ニッティング」において、少し似た仕事を担当しているからです。

「気仙沼ニッティング」の商品は、ニットデザイナーの三國万里子さんがデザインをしています。

そのデザインを、たくさんの編み手さんたちが編めるよう、サンプルをつくり、くわしい編み図を書き、編み手さんたちに編み方を教えるのは、じゅんこさんの仕事です。

「山道で、先頭を歩くような仕事です」
と、じゅんこさんは言いました。

「先頭の人は、枝をふり払いながら、歩きます。でも先頭の人が、正しい道を選び、後の人がついて来やすいように印をつけながら歩けば、みんなはスムーズに、その道を歩けるようになるでしょう」と。

じゅんこさんは、阿部さんがお仕事をされる様子を、じっと見ていました。

阿部さんの机には、ひときわ、いろいろな道具が置かれています。

「この道具はなんですか」
「あぁ、これは、革をこうやって切るときに使うんですよ」

「そして、このままだと革が厚いから、少し漉いて薄くしたい。そのときは、この機械でこうやって…」

阿部さんのお話に聞き入るじゅんこさん。

クオリティの高い仕事をするために、どんな工夫をしているのか。
どんな心持ちで仕事に向き合っているのか。
分野は違えど、同じ職人同士、通ずること、学ぶことが、きっとたくさんあるのですね。

阿部さん、西新井の工房のみなさん、お仕事の様子を見せてくださって、ありがとうございました。



さて、帰り道。
じゅんこさんと御手洗は、相談をしていました。


「今日は、勉強になりましたね」
「ええ、いいものを見させていただきました」
「私たち、なにをつくると、土屋鞄の職人さんのお役に立てるでしょうね」
「やっぱり、私たちにできることは『あたためること』ではないでしょうか」
「はい。実は今日、ちょっと気になることがあったんです」
「ええ、わかります。あれを担当している職人さんたち、冬になると、寒いかもしれないですね」
「そう、寒いかもしれない」

二人は、同じことを、思い浮かべたようです。
さて、どんなことを、考えているのでしょうか。

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