1. 季節の暮らしかた -紋切り遊び-

「紋切り遊び」で
創作の秋を楽しむ


金木犀の甘い香りが漂い、肌に触れる涼風が心地良い、この季節。“創作の秋”とも言われるように、過ごしやすい気候に恵まれた秋は、なんだか手や身体を動かしたくなりますね。

そんな秋の夜長に、江戸時代から庶民の間で愛されてきたという「紋切り遊び」を楽しんでみませんか。紋切り遊びとは、折り畳んだ紙を型紙通りに切り抜いて、日本の紋(家紋)の形をつくる紙遊びのこと。季節の風景を細やかに切り取った形も多く、実りの秋には、たわわな稲穂や色づいた楓などがモチーフに。

約30年にわたり、紋切り遊びの研究と普及に携わってきた造形作家の下中菜穂さんに、その歴史やつくり方を教えていただきました。

「平安時代以降、貴族や武士が家柄や地位を示すのに使っていた家紋は、江戸時代になると庶民も広く使うようになり、当時の暮らしの中からたくさんの形が生まれました。一つひとつの形は、四季折々の風景や動植物、暮らしの道具などがモチーフになっていて、どれも美しくて斬新なんですよ」

そう話す下中さんが「紋切り遊び」を知ったきっかけは、図書館でたまたま見つけた明治時代の遊戯の文献だったそう。そこに書かれている通りに自分でもつくってみると、形の面白さにたちまち夢中に。その後も紋切りの世界を探求し続け、今では本を出版したり、各地でワークショップを開いたりと、その研究がすっかりライフワークになりました。

「調べてみると、紋切りは江戸の職人が着物や手ぬぐい、お茶碗などに家紋を描くために使っていた指南書の他に、寺子屋の教科書にも載っていたようです。つまり、当時は子供から大人まで、広く親しんでいたものだということ。ただ現代の暮らしの中では、家紋というと堅苦しいもの、古くさいものと思われているところがあるでしょ。この素晴らしい“形”の文化を私たちの世代で途絶えさせてたまるものか ! と、勝手に使命感に燃えちゃったんです(笑) 。紋切りは、人の手と長い時間をかけて結晶した『日本の宝物』だと思っているので」


見て楽しむ、いろいろな形


そんな風に紋切りの魅力を語る下中さんは、古い文献の中から図案を掘り起こし、今では約600種類もの型をつくってストックされているそう。季節を感じるもの、ユニークなもの、伝統的なもの・・・。紋切りの形はバラエティーに富み、一つひとつに意味も込められているんだとか。

秋を感じるモチーフなど、下中さんに形のユニークな紋切りを数点、ご紹介いただきました。


「紋切り」をつくってみよう


さて、紋切りの歴史や形の面白さに触れて、自分でもつくりたくなってきませんか。ここからは、実際に手を動かして、紋切りをつくってみましょう。型紙もダウンロードしていただけるので、簡単につくることができますよ。

今回つくり方をご紹介するのは、「カタバミ」です。初春から晩秋まで道端に咲く、ハートの葉っぱが愛らしい植物。その旺盛な生命力にあやかり、子孫繁栄の願いも込めて昔から親しまれている形なんだそう。


用意するもの

・はさみ
・折り紙
・型紙
・クリップ
・カッターマット
(形によっては、カッターを使う場合もあります)

型紙はこちらからダウンロード
※A4サイズが等倍です。
※原寸で印刷する場合は、印刷設定のページ処理で「ページの拡大/縮小」設定を“なし”にしてください。


ベースとなる折り方には「1つ折り」から「5つ折り」まで5通りありますが、今回のカタバミは「3つ折り」でつくります。丁寧に折るのが、きれいにつくるコツです。

①折り紙を半分に折って三角形をつくったら、その真ん中の部分に指で簡単な印を付けておきます。

②1で付けた印に沿って、型紙を写真のようにクリップで止めます。

③④写真にならい、「3つ折り」をつくります。3つ折りができたら、折り紙に対して型紙がずれていないか確認し、折り目と型紙を合わせてきれいにクリップを止め直します。


⑤⑥続いて、切り抜く作業です。色の付いた箇所を全て切り抜いていきます。小さな面積の箇所から切るのがおすすめです。


⑦⑧全て切り終えたら、いよいよ開いていきます。どんな形が現れるのか・・・。この瞬間はいつもドキドキと胸が躍ります。



「カタバミ」が完成 !
今回は、オレンジやグレー、茶色など、しっとりと落ち着いた秋色でつくってみました。
こんな風に、色やサイズを変えても素敵ですよ。

紋切りのいろいろな使い方


切ってつくった形は、並べたり、組み合わせたり。実はいろいろな使い方が楽しめるんです。ここでは、いくつかの例をご紹介します。


ぽってりとした菊の紋切りで飾ったコースター。自宅に友人を招く、秋のパーティーで活躍しそう。
紐を付けてモビールにすれば、お部屋のインテリアに。ゆらゆらと揺れる姿や、壁に映る影も楽しんで。
薄い紙袋の中に入れて、内側から小さなライトを灯せば、和の雰囲気が漂う行灯が完成。
贈り物に添えたら、素敵なワンポイントに。「柴」がモチーフの形と色で、秋らしさを添えて。

せっかくなので、革でも紋切りをつくってみました。
革だと重厚感が出て、シックで落ち着いた印象に。
こんな風に素材を変えてつくってみるのも、面白いですよ。



四季折々、その季節ならではの植物や風景を楽しみ、
細やかな目を向けることで、生まれてきたユニークで美しい形。
そんな紋切りをつくったり、眺めたりしながら、深まる季節をゆっくりと楽しんでみませんか。


(株)エクスプランテ
(下中さんが主宰する出版社)
https://www.xpl.jp/

ご協力ありがとうございました。


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