1. 季節の暮らしかた -てぬぐいで夏を楽しむ-

てぬぐいで夏を楽しむ


拭いたり包んだり、一年を通じて暮らしの道具として活躍する「てぬぐい」。薄くて持ち歩きやすいうえに、乾きやすく、さらりと心地良い手触りで夏のお供にぴったりです。今回は、その歴史や絵柄に込められた意味などを伺いました。

訪れたのは『染絵てぬぐい ふじ屋』。創業1946年以来、浅草の地で『注染染め(ちゅうせんぞめ)』という伝統的な技法にこだわり続けているお店です。

今回、お話を伺ったのは二代目店主であり、てぬぐい絵師としても活躍されている川上千尋さん。

「注染染めは模様の型を生地の上に置いて、模様をつけない部分に糊をつけて染料を注ぎ込み、残った部分に色をつけていく、という昔ながらの染め方です。一色染めるごとに糊と余分な染料を落として、天日で乾燥させる、という工程を経て出来上がるんです。すべてが手作業だから同じものがない、というのも魅力の一つですね」

てぬぐいの歴史は古く、江戸時代にさかのぼります。
「頭にかぶったり、お手拭きにしたりという使い方以外に、浴衣の帯としても使われていました。切りっぱなしになっているのは、反物として切り売りしていた頃の名残です」と川上さん。ちなみに、切りっぱなし部分の糸のほつれは、数ミリのところで自然に止まるそうです。

昔から人々の暮らしに根付いてきたてぬぐいは、生活の道具であり、飾って愛でるという文化もあったといいます。

なかでも注目したいのは、季節を感じられる絵柄。かつてつくられてきたてぬぐいにも、植物や波、雲など、身近な自然をモチーフにしたものが多数あったと川上さん。店頭に並ぶものを見ると、色鮮やかで、目にも楽しい! 自然を美しいと感じる気持ちは、昔も今も変わらないのだと改めて気づかされます。

このほか、伝統の柄やユーモアのあるもの。バリエーションに富んだ絵柄を、いくつかご紹介いただきました。

見て楽しむ、絵柄いろいろ

夏の訪れを楽しめる柄のてぬぐい。夜空に打ち上がる花火は、ぱっと目を引く鮮やかな色合いが印象的です。全体を川の流れに見立てた一枚は、そこから覗く鮎の姿が涼しげ。

そして、夏のごちそうといえば・・・。

美味しく実ったスイカが、ごろり。切ったときの中身の鮮やかな赤を思い描いて、わくわくしてきます。

昔ながらの古典的な模様も味わい深いもの。松の葉をモチーフにした柄の中に、斜めに入ったぼかしが山道のようにも見えることから名付けられたという「山道」(写真左)。おなじみの「豆絞り」(写真右)は染め物ならではの、にじみにも個性が見えてきます。

ふじ屋の暖簾にも使われている「いとし藤」は、「い」の字を十個連ね、その真ん中を「し」の字で結んで藤の花を描いたもの。「い」が十で「いとおし=愛し」という言葉遊びも、粋に感じられます。

黒字に大きな鯨の目が、ぎょろりと見つめてくるこちらは、「目くじらをたてちゃいけません」という、しゃれが込められた一枚。てぬぐいには、こうしたしゃれを含んだ絵柄も多く、江戸時代には、しゃれっ気を競う催しまであったそうです。

シンプルなかたちを生かした、こんなてぬぐいもありました。絵柄に沿って折っていくと、祭半纏や本の出来上がり。遊び心のある仕掛けで、ずっと飾っておきたくなります。

はかま風のデザインは、ささっと折ると「ひざ掛け」に。ユーモアあふれる一枚は、注目を集めそうです。


絵柄に込められた意味や由来を知ると、手に取るのも楽しく、ますます愛着がわいてきます。

見て楽しむのはもちろん、天然素材で吸湿性も高く、乾きやすい手ぬぐいは夏の暮らしのなかでも出番がたくさん。枕掛けや布団のえり掛けにすればさらりと心地良く。水で濡らした手ぬぐいをぎゅっと絞って首に巻けば、首元から体の熱をすっと冷ましてくれます。お手入れもささっと手洗いで、すぐに乾くのも嬉しいところ。涼しげな柄をコースター代わりにすれば、夏の食卓も華やぎそうです。

お気に入りの柄を眺めて楽しむもよし、どんどん使って自分に馴染んでいくのを楽しむもよし。この夏は、てぬぐいと過ごしてみてはいかがですか。

「染絵てぬぐい ふじ屋」
東京都台東区浅草2-2-15
TEL:03-3841-2283
FAX:03-3845-2483
営業時間 10:00~18:00(定休日 毎週木曜日)
https://www.instagram.com/tenuguifujiya/



心地よい音色で涼をとる風鈴。
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