1. No.27 名もなき、ちいさな彫刻

コツコツつくって50余年の工房を、ウロウロとしてみます。
つくる職人、使う道具、できあがったものに近づいたり離れたりしながら、
工房の音や声、匂いを綴るコラムのような、ちょっとしたよもやま話です。

2018/2/23

名もなき、ちいさな彫刻

ギィーーーーーーッ。グィンッ、グウィウィンッ。ガリガリガリッ。

職人の手の先で、細いヤスリや、歯医者さんが使うドリルのような電動具が、忙しそうに金属の塊を削っています。それはまるで、小さな彫刻をつくっているかのよう。奇妙な凹凸のある、見たこともない形ができ上がっていきます。

これは、ミシンの中でパーツを押さえる部品を改造しているところ。ステッチをかけるパーツの形や厚さに合わせて違った形のものが必要なので、経験豊かな職人が想像力を膨らませながら、最適な形にカスタマイズしています。日々使う道具を、今よりもっと使いやすく、よりよい仕事ができるように。そうしたカスタマイズも、職人の「技術」であり、「独創性」。どちらかと言えば目立たないものだけど、経験豊富な職人だからこそできる、クリエイティブな仕事です。

今日も工房のどこかで、職人の手によってつくられているかもしれない、個性豊かな小さい“彫刻”たち。一つひとつに名前は付いていないけれど、これからも道具箱の片隅でひっそりと出番を待ちながら、新しい鞄を生み出していくことでしょう。


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