1. 筒井時正玩具花火製造所
花火筒井時正玩具花火製造所ものづくり

繊細で美しく、そして儚い線香花火。静かに燃える様子は、日本ならではの情緒を感じる。
一時は途絶えかけた、国産の線香花火づくり。その製造元は現在3社しか残っていない。そんな現状でも日本の伝統を絶やさぬよう、熱意ある日本の職人の手仕事によって支えられている。線香花火にかける想いをうかがいに、福岡県みやま市へ。
向かった先は、筒井時正玩具花火製造所。線香花火と聞いて多くの方が想像するカラフルな紙に包まれた長手牡丹と呼ばれる線香花火だけでなく、スボ手牡丹(1・2枚目写真)という関西を中心に親しまれてきた線香花火も製造している。スボ手牡丹を製造しているのは、国内ではここだけだ。
まわりをぶどう畑に囲まれた場所に建つ事務所で迎えてくれた3代目職人・筒井良太さんと、ものづくりを支える今日子さんにお話をうかがった。

筒井時正玩具花火製造所


花火
花火

「うちは、もともと線香花火をつくっていなかったんです。日本で線香花火製造をやっていた最後の1社が親戚のところで、10数年前にそこの方に修業に来ないかと声をかけていただいたんです」

当時はまだ若かったので、“自分たちの手で線香花火の伝統技術をつなぎとめたい”というような格好いい想いは正直なかった、という。良太さんは3年の修業期間を経て、さらに自身で研究を重ね、オリジナルの線香花火をつくり上げていった。

筒井時正玩具花火製造所


ものづくり


筒井時正玩具花火製造所

研究に明け暮れる毎日。朝、明るくなったら真っ黒になって良太さんが帰ってくるという日々が続いた、と今日子さんは当時を振り返る。
「帰ってきてもずっと首をかしげていて。“花火が完成したときはものすごく良かったのに、いま見たら全然良くない。わからん”って。ずっとそんなことを言ってました」
花火製造にはタッチしていなかった今日子さんだが、あるとき、いったいどんなものをつくっているのか見せて、と研究中の線香花火を見せてもらうことに。その線香花火の火花が、今日子さんを釘づけにした。
「もう、びっくりしたんですよ。その線香花火を見て。小さいころから花火が好きで毎日駄菓子屋に買いにいくほどやってたんですけど、そのときに見ていた火花とはまったく違っていて。こんなに違うんだ、すごいなって本当に思いました」

花火
花火

良太さんの修業先だった国内唯一の線香花火の製造所が廃業する際、筒井時正玩具花火製造所が技術とともに残っていた原材料も引き継いだ。しばらくの間はその材料でつくっていたが、少なくなりそろそろ調達しないとという段階で、思わぬ困難にぶつかった。昔ながらの製法に不可欠な、膠(にかわ)が手に入らない。数少ない製造元が廃業していたためだ。膠はのりの役目を果たしているが、代用品では粘度があわず、花火には使えなかった。その後さまざまな手を尽くして、これまで使ってきたものと同じ粘度の膠をつくってくださるところを見つけたという。こうまとめてしまうとあっさりしているが、今日子さんの話の節々からは“私たちがなんとかしないと”という花火に対する深い愛情と、責任を重んずる気持ちをひしひしと感じた。

「花火の原型は、300年間ずっと変わらないんです。それを、うちで終わらせられない。300年の歴史を、ここで途絶えさせるわけにはいかない。その想いでもう必死でした」

筒井時正玩具花火製造所 ものづくり

線香花火は、そのわずかな時間のなかで表情をいくつか変える。火をつけると命を与えられた花火の先端は赤く膨らみ、玉のような形に。文字通り“ぐつぐつ”という繊細な振動が、花火を持つ手に伝わる。しばらくすると躍動する生き物のごとく、立体的で奥行きのある火花が弾け出す。「牡丹」と呼ばれる段階で、人間でいう若々しい頃だろうか。次の表情「松葉」はさらに勢いが増しながらも、丸みのある柔らかな火花に。とげがとれて、とても柔和な様子に見えた。そして最後は、静かに終わりへ向かう「散り菊」。

筒井時正玩具花火製造所


花火

「火薬の量がほんの少し違うだけでも、線香花火の咲き方は変わるんです。火薬が多いと『牡丹』の火花は大きいのですが、『散り菊』が美しくない。1/100g違うだけでも影響がでます。本当に微妙な差なんですよね」

花火に眼差しを注いでじっくりと楽しむひとときは、とてもぜいたくな時間のように思える。こうした繊細なもののなかに、昔から美しさを感じていた日本人の感性がとても誇らしくも思えた。

花火 筒井時正玩具花火製造所

「最近は花火離れが進んで、売れなくなってきたんですよ」
昔と比べて子どもの遊びが変化し、なかなか外で遊ぶ機会がない。さらに、特に都市部では花火がのびのびできる場所も減ってきており、年々花火離れが進んでいるのを実感するという。花火の魅力、そして日本の職人がつくった花火技術の高さを実感してもらえる機会を、と筒井時正玩具花火製造所では定期的にワークショップを開催している。
「いま市場に出回っている花火のほとんどが中国産です。国産と中国産の花火の違いは、見た目ではわかりません。どう違うのか、疑問に思う機会すらない方のほうがほとんどだと思います。実際に火を点けてやっていただくことで、花火への興味を持ってもらいたいですね。花火ってこんなふうにつくられているんだって知ってもらえると、花火の見方も変わってもっと楽しんでもらえると思います。
私たちはこれから線香花火を軸にしながらも、これまで手がけてきた玩具花火にも勢いをつなげていきたいですね」

ものづくり


筒井時正玩具花火製造所


筒井時正玩具花火製造所
福岡県みやま市高田町竹飯1950-1
TEL 0944-67-0764
url. http://www.tsutsuitokimasa.jp/

2015年7月に取材

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