1. Chapter 1 「皮」から「革」へ

革のことばと基礎知識

革の歴史は古く、人類は太古から動物の皮を利用しようとしてきました。
しかし動物の皮は、そのまま使おうするとスルメのように固くなるか、腐ってしまいます。
そこで、皮の柔かさを保ちながら長く使い続けられるよう、口の中に入れて噛む、煙で燻す、
油に漬け込む……と、試行錯誤を繰り返しました。
そうした長年の苦心の結果、我々は「革」という素材を手に入れることができたのです。
こちらでは動物の皮から素材の革ができるまでをテーマに基礎知識をご紹介します。


「皮」から「革」への大きな流れ

①はじまりは、動物の「皮(原皮)」から

革の原材料は動物の皮膚で、これを「皮」と書きます。特に革づくりに用いる皮は「原皮(げんぴ)」と呼ばれ、ほとんどが食肉用に処分された動物から採られるものです。この原皮は体毛だけでなく垢や脂肪・肉片などが残っているため、腐らないよう、ひとまず塩漬けに。次の「鞣し」工程まで、温度と湿度を管理しながら保管します。

②柔らかいまま保存性を高める「鞣し」

塩漬けの原皮はまず塩分を抜かれ、体毛・表皮・脂肪・肉片なども除去されます。この下準備を経た原皮をクロームという金属の化合物や植物の渋を溶かした鞣し液にさらし、コラーゲン線維を変質させる作業が「鞣(なめ)し」です。この鞣しによって保存性が格段に高まり、柔軟性が保たれ、長く使える状態になったものが「革」です。

③数々の仕上げを経て、ついに「革」へ

鞣された「革」には起伏があるので平らに均され、厚さを整えられます。さらに色をつけたり、個性的な表情や風合を加えたりして、ようやく鞄や靴などの素材として使える状態に仕上がります。こうして皮から革になるまでは早い方法で1ヶ月、昔ながらの方法では実に1年以上。それだけ多くの時間と手をかけて、はじめて革が出来上がるのです。


「皮」と「革」の構造の違い

「皮」には外側の薄い表皮層と、コラーゲン線維でできた真皮層の大きく2層があります。
「革」はそのうち、乳頭層・網状組織からなる真皮層のみを鞣してつくられます。

用語集

  • 【鞣し(なめし)】

    原皮に加工や処理を施すことでコラーゲン線維を変質させ、柔軟性を保ちながら保存性を高めて、長く使える素材にすること。鞣す前の状態を「皮」、鞣した後のものを「革」と表記します。

  • 【かわ(皮、革)】

    「かわ」には2つの漢字があり、動物の皮膚や鞣す前のものを「皮」、鞣した後のものを「革」と表記します。素材として使う「かわ」は後者。「牛皮」は牛の皮膚という意味になります。

  • 【銀(ぎん)・床(とこ)】

    真皮層のみからなる革は、その線維構造の違いから、表皮側の乳頭層と肉側の網状組織に分かれます。そのうち薄い乳頭層側を「銀(面)」、厚い網状組織側を「床(面)」と呼んでいます。

  • 【タンナー】

    皮の鞣しを行う専門の業者・職人で、「鞣す・日焼けさせる」という意味の英語“tan”が語源。タンナーはそれぞれ独自の鞣しレシピを持つため、タンナーごとに違う革が仕上がります。

  • 【タンニン鞣し】

    植物に含まれる「タンニン(渋)」という物質で、皮を鞣す方法。鞣しにはミモザやケブラチョといった樹木のタンニンを適宜混合して使い、自然な風合と経年変化が特徴の革ができます。

  • 【クローム鞣し】

    クロームという金属の化合物で皮を鞣す方法で、1960年代に誕生。低コストで仕上がりが早い上、軽く柔軟で発色もいい革ができるため、現在は鞣し方法の主流になっています。

  • 【コンビ鞣し】

    クローム鞣しの後、タンニン鞣しで再度鞣す方法。タンニン鞣しのナチュラル感とクローム鞣しの軽さ・柔軟性を併せ持った革ができ、併用比率を変えることで様々な革をつくれます。

  • 【バケッタ製法】

    イタリアに1000年前から伝わる伝統的な革づくりの製法で、イタリア・トスカーナ州で特に盛ん。植物の渋だけで皮を鞣し、それに油脂をたっぷり加えて味わい深い風合に仕上げます。

  • 【ピット(pit)】

    鞣しの際に皮を漬け込む大きな水槽。主に植物タンニン鞣しの際に使用します。鞣し液の濃度ごとにいくつも用意され、低濃度から高濃度へと段階的に皮を漬け替えてゆきます。

  • 【ドラム(太鼓)】

    皮や革を鞣し剤や染料・油脂などと一緒に入れ、大きく回転させて撹拌(かくはん)するための大型機械。その形から、日本では「太鼓」とも呼ばれ、鞣し染色や仕上げなど、多くの工程で使われます。

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