1. タンナー N.Y. LEATHER
革タンナーものづくり

革製品の素材である「革」がどのようにつくられているか、ご存じだろうか。日々革製品に接しているが、実際にその製品に使われている革がどのようにつくられているのかは、なかなか見る機会がない。動物の皮膚をはいだ状態の「皮」を、鞣して「革」にする。その工程は、タンナーと呼ばれる革の生産を担う工房で行われる。間近で見た光景は、一見ダイナミックに見える工程のなかに職人の感覚が随所に光り、こういう方が革づくりを支えているんだと、なんだか心強く感じた。

兵庫県・たつの市にある、タンナーのもとへ。姫路市やたつの市がある兵庫県南西部は、地場産業として昔から皮革製造が盛んな地域。今回見学するタンナーのまわりにも、同業の工房が肩を寄せ合うように密集していた。

タンナー


革
革


敷地内に入ってすぐに、水の音に気づく。そして最初に案内された建物で、大きな水しぶきをあげて豪快に回る大きな樽のようなものに圧倒される。直径4mくらいはあろうか。このとき可動していたのはひとつだが、奥に同様のものがいくつも並んでいた。これは「タイコ」と呼ばれるもの。ここでは、原皮を薬品などと一緒にタイコに入れて数日間回し、柔らかくしたり毛抜き処理を行う。
タイコのなかをのぞくと、大きな突起がたくさんついている。これは、ぐるぐる回す際にこの突起に原皮が引っかかることで、効率よくタイコのなかで回転させるため。全体的に船の一部のように見えると話したら、タイコは船の大工さんがつくってるんですよと教えてくれた。

タンナー


ものづくり タンナー

ここでつくられているオイルラスティックレザー(ユニックリベルタシリーズで使用している革)は、プルアップが楽しめる。プルアップとは、革を裏側から指で押し上げたりするとオイルが革の繊維内を移動して、表面の色の濃さが変化すること。使うほどにオイルの影響で革の色みにムラができて表情が変化し、味わいが増すのが特徴だ。(ブラックは色が濃いためプルアップの様子がブラウンと比較してかなりわかりにくいが、ブラウンと同様にプルアップする)

使用するオイルは黄色く、はちみつのよう。革にオイルを付ける機械を見せていただく。回転する細かいメッシュ状のロールにオイルを付着させ、そこに革を通して塗り込む。大きな樽からオイルを柄杓ですくい、回転しているロールに一気にかける。ロールにオイルが広がり、そこに革を通していく。乾燥機で少し乾燥させたのち、革を吊るして一晩寝かせる。
「オイルが浸透するのを待ちます。ちゃんと寝かなさないと、ツヤが出ません」
オイルが革に浸透すると、深みが増して色ムラも落ち着くという。その感覚は話で聞いただけではつかめないが、毎日革と向き合うタンナーの職人にとっては小さな違いもわかる。ひとの目で確かめているからこそ、小さな差異に気づける。

革
革 タンナー

革の色付けは機械で行うが、色の確認のためまずは手作業で試作をつくる。タンナーの仕事について14年目という溝内さんが、その様子を再現してくださった。
見本の色を目指して10種類以上ある染料から色を選び、混ぜて色を近づけていく。何か配合のマニュアルがあるわけではないという。まずは薄い色(黄色)から調合。濃い茶系は最後に。染料をあとから薄くすることはできないため、失敗してロスになるのを避けるためだ。見本の色に近づくよう、オレンジやブラウンを迷いなく混ぜる。缶に入った染料の色は暗くて、実際どのように発色するのかはよくわからない。そのため、混ぜた色が見た目で「完成に近づいた」ということは素人目には判断できなかった。想像力が必要な作業なんだと思う。

「色の出し方は、ひとそれぞれ。その日の気分によっても、混ぜ方が変わります」
そんな話をしている間に、見本と同じ色が完成。
「色合わせで大事なのは感覚。誰でもできるわけではないんです。何というか、センスが必要な作業です。何色が足りないか、直感的にわからないとできない」
このタンナーではまずはいろんな工程を3〜4年経験したのちに、適性をみて色合わせを任せている。

ものづくり


タンナー


革
革


タンナー

革はたくさんの工程を経て仕上がる。ひとつひとつの工程は「ひとの手」によるところが多く、感覚やつくり手のセンスが問われるような場面がいくつもあるように感じた。天然素材は、1枚ごとに個性があり画一的ではないところがおもしろい。それに対応するつくり手もまた感覚を研ぎ澄まし、それぞれの革と呼応するように手をかける。

原皮の状態から、多くの方が手間と時間をかけて革になるという一連の流れを実際に見ると、無駄にはできないと思うし、製品づくりも妥協できない。鞄を最終的に仕上げるのは鞄職人だが、そこに至るまでのこうしたあらゆる分野の職人がいるからこそ、ものづくりが成立する。使うひとが心地よく感じられる製品になるよう、職人は力を注ぐ。スタート地点である革づくりもその大切な工程のひとつだと、あらためて実感した。



N.Y. LEATHER(有限会社中嶋義浩製革所)
兵庫県たつの市揖保町松原245

取材時期:2015年2月

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