1. 今日のコラム/春、桜から何を想う。
桜

職人の手仕事によって、革製品をつくる土屋鞄。分野は同じでなくとも、ものをつくることや製品に対する想いに対して共感することに、日々たくさん出会います。ものづくりにまつわる日本各地の出来事や、古くから伝わる日本の美意識、お話をうかがってみたいと心惹かれる方についてなど。今日のコラムでは、土屋鞄のスタッフが共感し、多くの方と共有したい話題についてお届けします。

桜

春、桜から何を想う。


FRIDAY, 3 April 2015

さまざまの事おもひ出す桜かな 松尾芭蕉
昔から多くの俳句や和歌の題材にもなり、日本人にとって昔から特別な存在ともいえる桜。今年も、暖かさにのって多くの地域では桜の季節が到来しました。季節を感じる風景は、ときに思い出とリンクします。新しい環境がスタートする期待感、毎年家族で観に行く公園のにぎわい、切ない別れ。桜から、皆さんは何を想いますか。どんなことを思い出すでしょうか。

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熊本県に美しい桜の木があると知り、3月下旬に阿蘇山近くにある大きなヤマザクラ「一心行(いっしんぎょう)の大桜」のもとへ。桜の名前の由来は南阿蘇村のWEBサイトなどによると、戦で散った霊を供養するために桜を植え、一心に行をおさめたことからこの名が付いたとされています。
訪れた日はつぼみの状態で、開花の一歩手前でした。熊本市内の標本木はすでに開花していましたが、ここは平地よりも寒いため、毎年1週間ほど開花が遅れるそう。(その後、3/30に開花したとのことです)

推定樹齢400年の樹の高さは、約14m(4階建てマンションくらい)。背景の阿蘇山と平行方向の東西には約21m、南北方向に約26mの枝張り。対面した瞬間、その大きさと存在感に圧倒されました。地面に這うように伸びる、太い枝。重心が低いせいか、どっしりと貫禄があります。開花していたら、本当に見事なんだろうなと想像できます。

桜


一心行の大桜


昭和初期の落雷によって幹が地面に近いところまで6本に裂け、ドームのようなこんもりとした美しい形に。しかし、2004年の台風の影響で大枝2本が折れてしまい、現在のような樹形になったとのこと。枝は毛細血管のように間を埋めるように細かく広がり、先端にはたくさんのつぼみが。エネルギーをためて、いまにもぱっと開きそう。今年はいつ咲くの?と、太陽とつぼみがやりとりをしているようにも感じます。地面に近いほうが、地熱の影響もあって早く開花するんだよ、と地元の方が教えてくれました。


地元の方にとって一心行の大桜は、町の活性化にとって大事な存在だといいます。
「桜の時期は、阿蘇の町が元気になるんです。毎年2回も3回も来てくれるお客さんもいて、うれしいよ。もっといろんな方にも知ってもらえたらいいな」
普段は静かで穏やかなこの地域が、桜が咲くころにはたくさんの観光客でにぎわいます。何人か地元の方にお話をうかがっていると、多くの観光客が集まることによる経済効果ももちろんですが、春になると一心行の大桜がたくさんの方の頭に浮かぶということ自体が、地元の方にとってはうれしいことなのだと思いました。

桜


一心行の大桜
桜


「毎年花が咲くと、今年もようきれいに咲いてくれたねって思いますよ。大きな枝が折れてから、ずいぶん持ち直したんよ。元通りではないけどね。今年はまだちょっと寒い。温(ぬく)いと桜は目が覚めて、にこにこして開くんですよ。今年はもうすぐじゃけ」

大桜の満開の様子は見られませんでしたが、この光景はまた来年の同じころに思い出すのだろうと思います。ぱっと咲き、散りゆく姿もまた美しい桜。今年もたくさんの方の思い出の一部に、そっとなっていくのだろうと思います。よかったら、皆さんの桜の思い出を教えてください。

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一心行の大桜
熊本県阿蘇郡南阿蘇村中松3226-1
駐車場:普通車500円/1日



取材時期:2015年3月
掲載:2015年4月3日

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