1. 今日のコラム/木の手入れを知る。
手入れ

職人の手仕事によって、革製品をつくる土屋鞄。分野は同じでなくとも、ものをつくることや製品に対する想いに対して共感することに、日々たくさん出会います。ものづくりにまつわる日本各地の出来事や、古くから伝わる日本の美意識、お話をうかがってみたいと心惹かれる方についてなど。今日のコラムでは、土屋鞄のスタッフが共感し、多くの方と共有したい話題についてお届けします。

手入れ

大事なのは「日々使い、見る」こと。木の手入れを知る。


FRIDAY, 27 FEBRUARY 2015

家具や道具、生活のなかで身近な存在の「木」。木も革と同じように天然素材のため、使っていくうちに表情が変化していきます。長く心地よく使うためには、やはりひと手間かけることが大事。購入して手に入ったときが、ゴールではありません。いかに使うか。ものが大きく壊れる前に気づけるかどうかは、使い手とものとの日々の関係が大きく影響するように思います。
土屋鞄で販売している「ファーストスプーン Gift set」の製作を手がけるlaboratory主宰・田中英一さんは、木のことやものづくりについていろんな話を教えてくれます。さまざまな環境で長い年月をかけて育った木が持つ特徴や、木の製品を使うということ。今回は「木の手入れ」にまつわるお話をうかがいました。

土屋鞄とlaboratoryがコラボした「ファーストスプーン Gift set」はこちらから>>

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木


「このまま放っておくとまずいな」と気づけるかどうか。

「木は種類や生育条件などによって特性が違うため、手入れの完璧なマニュアルはありません。使い手が毎日いかにかわいがっているかによっても違います。“何年経ったらメンテナンスが必要”というのはないです」

家具や道具など長く使おうと思っているものを何か選ぶとき、素材の特性を知ることも大切な要素となります。もしかしたら、自分のライフスタイルには合わない素材かもしれません。たとえば木のテーブルを大事にしようとして全面にビニールマットを敷いてしまうと、木自身が湿度調整できなくなって傷んでしまいます。田中さんは制作打ち合わせの段階で、お客さまの考え方や生活スタイルに応じて、木との付き合い方についてもお伝えしているそうです。ものを使うことに「責任を持つ」というと大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、自分のもとでそれがどう過ごすことになるのか、いい関係が築けるのかを最初に考えてみることも大切なことだと感じました。

手入れのタイミングは、「このまま放っておくとまずいな」と感じたとき。そう気づける日頃の準備も必要です。毎日大事に使っているからこそ、少しの変化に気づける。ひとへ関心を寄せるのと似ているかもしれません。気になる存在だと体調悪そうだなとか、今日は何かいいことあったのかなというような何気ない変化に気づくように。

スプーン


木


いちばんのメンテナンスは、「毎日使い、見てあげる」こと。

laboratoryの家具をお使いのお客さまのもとへ、メンテナンスにうかがったときのことを教えてくれました。7〜8年ほど前に納品した椅子のメンテナンス依頼があり、椅子と再会。椅子の様子を確認すると、木を接合するほぞ部分が長年の使用で少し緩んできたところでした。毎日使うなかでちょっとの変化を感じとり、ちょうどいいタイミングで修理を依頼してくださる。椅子が使い手の生活の一部として、とても大事にしてもらえていると感じたといいます。

なお、田中さんはご自身がつくった家具に再会すると、家具に使った木のことを思い出すそうです。これは切るときこんな感じだったなと、いろんな思い出がよみがえる。経年変化して制作当時と木の表情が異なっていても、わかるとのこと。木と向き合い、背景や特徴も知ったうえで木を生かしてものづくりをする田中さんならではだなと思いました。

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木


スプーン


木の手入れを実践。オイルを浸透させて、つややかに。

今回は、田中さんのお子さんが実際に使っていたファーストスプーンの手入れを行いました。潤いがなくなってかさついた状態の木に、オイルを与えます。ここで使うのは、食用のえごま油。ファーストスプーンの色付けにも使用している、口に入れても安全な国産無添加のものです。えごま油は、乾性油(かんせいゆ)といって植物油のうちもっとも乾燥性が高い種類の油です。木にオイルを塗るときは、乾性油のものを選ぶのがポイント。なお、オリーブ油は乾燥しにくい不乾性油のため、塗り込むんでも乾かず木のメンテナンス用としては向きません。油は種類によって乾き方が異なるとは、知りませんでした。

オイルを木に直接塗るだけでももちろん十分ですが、よりオイルを浸透させるためのひと手間を教えてもらいました。それは「全体にサンドペーパーをかける」こと。よりつやが増して、効果抜群です。ここで使用するのは、400〜600番あたりのサンドペーパー。木目に沿ってかけていきます。サンドペーパーをかけて全体をすこし削ることによって、かさついていない部分もオイルが染み込みやすくなり、ムラがでにくくなるそう。サンドペーパーにオイルを浸して、もう一度ペーパーをかけるとつやがでてきます。こうしてオイルをまんべんなく塗ったら、浸透させるために少し時間をおきます。木にオイルがぐんぐん浸透し、元気になっていくように思えました。その後、ペーパータオル(キッチンペーパーなど)でオイルをふき取れば完了です。つやつやで、深みのある表情に変わりました。

「ファーストスプーンを使い終えて、お子さんが少し大きくなったら一緒に手入れをしてもいいかもしれませんね」

木


手入れ


この日、ファーストスプーンと一緒に木の器もメンテナンスしました。これは、5〜6年前に田中さんが制作した器。栗でできており、田中家の食卓に日常的に並んでいます。面積の広い器は、オイルを指でなじませていきました。つやつやになった器は、よりいっそう料理を引き立ててくれそうです。つやがでると木目に重厚感が出て、あらためて木の美しさを楽しむことができました。

日々何気なく使っているものでも手入れをしようとすると、ものの状態が普段より一段深く見えてくるように思います。どんな質感か、どんな木目なのか。どこか違和感のあるところはないか、細部はどうなっているのか。長くよりよく使うための手入れとして、まずは木に「触れて、見る」ことから始めてみませんか。


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laboratory
埼玉県所沢市三ケ島1-257-1
電話 04-2946-9555
url.http://www.labo-style.com/

取材時期:2015年2月
掲載:2015年2月27日

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