1. 革のなるほど。 vol.29〜


革のなるほど。

知ると誰かに話したくなるような、
革などにまつわるエピソードやまめ知識をご紹介します。

革
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2000年のシドニー五輪・競泳では、日本選手が銀・銅併せて5つのメダルを獲得。このとき、好成績を後押ししたのがM社の新型水着でした。この水着の特徴は、縫い目なしで身体全体を覆うデザインと、サメ肌のザラザラした「楯鱗(じゅんりん)」構造を生地に取り入れたこと。生地表面に、楯鱗と似たV字型の微小な突起を無数に埋め込んでいたのです。

こうして表面を鮫肌状態にすると、泳ぐ際に体表面に微細な渦が発生し、それが浮力や推進力を向上させるのだとか。この効果は既にNASAの航空実験で実証されていましたが、水着に転用するのには4年もかかったそうです。なおこの鮫肌水着、あまりに高性能すぎて現在は使用禁止。そんな優れた装備を、鮫たちは何万年も前から身に着けていたのです。

革
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水分補給といえば、水筒。そのルーツは、欧米や中東では5,000年ほど前に遡るとされます。初めは元々袋状である動物の胃袋や膀胱が使われましたが、供給不足のためか、次第に革製が普及。中でも重宝されたのは、ヤギ革のものでした。薄くて軽くて丈夫な上に、肌目が細かいのがポイント。その微細な線維の間から水が徐々に気化し、内部の熱が奪われるため、保冷効果があるのです。

このヤギ革水筒は元々羊飼いの道具でしたが、やがて野外でワインを飲むためのものに進化。英米圏で「ワインスキン」、スペインで「ボタ・デ・ビノ」、バスクでは「サハト」と呼ばれ、今でも使われています。形は元祖・水筒の胃袋型で、飲み口は動物の角。中に植物性の樹脂を塗って止水します。ちなみに、回し飲みするため、飲み口を離して口目掛けてワインを飛ばすのが「作法」です。

革
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日本を代表するアート・浮世絵に、鮫の皮が必要だと聞いたら驚かれますか? 実は浮世絵を刷る際に使う刷毛の手入れ「刷毛おろし」に、カスザメという鮫の皮が使われるのです。これは鮫皮の細かく鋭い鱗で刷毛の毛先を割き、ふんわり柔らかな枝毛にするため。これによって染料が刷毛に乗りやすくなり、繊細な作業がやりやすくなるのだそうです。

刷毛おろしは、まず火で毛先を炙ることからスタート。次いでその毛先を水で濡らし、板に張った鮫皮で擦ります。このとき、鱗が生えている向きに逆らうように、尾から頭の方に向かって動かすのがコツです。面白いのは、寿司屋さんのワサビおろしとは違い、丸々1匹分を板に張るということ。全長は1m以上あるそうなので、かなり見事な物でしょうね。

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冬の季語でもある干し柿が、甘柿ではなく渋柿からつくられるというのは、意外に知られていないようです。これは、渋柿には甘柿よりも多くの甘味成分が含まれているためで、干して「渋が抜ける」と甘柿よりも甘くなるからです。では、なぜ渋柿を干すと「渋が抜ける」のでしょうか? それは、革のエイジングにちょっと似た感じの仕組みなのです。

渋柿の渋味の原因は、皮を鞣すタンニンの一種「カキタンニン」。これは水溶性なので唾液に溶けて強烈な苦味を発揮し、甘味を消してしまいます。ところが渋柿を干して乾燥・熟成させると、これが水に溶けにくい性質に変化。すると舌が苦味を感じなくなり、本来の甘味だけが感じられるのです。柿も革も時間を置くと「味が増す」とは、面白いですね。

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