1. クッションファスナー長財布
長財布
長財布
長財布

この長財布は、「袋縫い」という手法を採用している。これは、革を裏返しで縫い合わせておいてから全体をひっくり返すというもので、縫い目が隠れることで丸みを帯びたシルエットになり、ふっくらとしたボリューム感が出るのが特徴。輪郭をはっきりと出し、全体をバランスよく仕立て上げるには熟練の技術が必要となる。

この「袋縫い」はバッグではよく採用される手法だが、財布の仕立て方としては、実はあまり使われない。サイズがずっと小さく、内装に部品がぎっしりと詰まる財布では、「返し」(全体をひっくり返す作業)が非常に難しくなるからだ。この長財布でそんな「袋縫い」をあえて採用しているのは、オイルヌメ革のふっくら柔らかな質感を最大に引き出すためである。


長財布

「袋縫い」に入る前に、この長財布では内装の各パーツとファスナーを組み上げた内装一式を製作しておく。その表と裏にそれぞれ、「ロ」の字型をした革を裏返しにして張り込み、4辺をしっかり縫製すると、中央に四角い穴の開いた袋が出来上がる。両面とも、オイルヌメ革の毛羽立った裏面を表にしているので、スウェードの座布団といった感じだ。


長財布

四角い革の袋ができたら、メインの「返し」工程に進む。まず、中央の四角い穴から手を中に挿入。次いで、角を外から中にぐいっと押し込むと同時に、四角い穴から中身を少しずつ、慎重に引き出してゆく。このとき注意しなくてはいけないのが、中にあるファスナーや金具で革に傷をつけないということ。一見、単純に掴み出しているように見えるが、中ではファスナーの部分などを指先で微妙にコントロールし、細心の注意をもって引き出している。

「袋縫い」の仕上げは、4辺のエッジを出して、シルエットを整える作業。四角い穴から出した外装の角を、中から親指の爪先でグッと押し出す。こうすることで、輪郭をはっきりと出してゆくのだ。これはヘラでやった方が楽なのだそうだが、力の加減がしづらいため革を破く危険がある。そのため、ここでは指先の繊細な感覚を頼りに行っている。

中から形を出した縁を今度は外から指でしごき、さらに金槌で叩いてペタンとさせる。これは簡単なようだが、すぐそばにファスナーが立っているので、それに触らないよう注意が必要。内側から入れて外側に流れるよう、軽く当て払うのがコツだが、これも手先の感覚が要る技術だ。


長財布
長財布
TOP