1. laboratory/ものづくりを訪ねる
laboratoryインタビューものづくり

埼玉県・狭山湖の近く。最寄りの駅から少し車を走らせると、目指す建物が見えてくる。田中英一さん主宰の木工工房「laboratory」のアトリエだ。建物とそのまわりの風景が見えて、すぐに「ぴったり」という想いがわいた。

目の前に広がる風景と、自然を楽しみながら過ごすようなひとがきっとlaboratoryの家具やアイテムを生み出しているのだろうという予想が、ぴったりとあったのだ。

住居兼家具ギャラリーでもある建物の二階には、たっぷりと日が差し込んでいる。大きな窓からは、季節の変化が楽しめるんだろうなとすぐに想像できた。そんなこの建物から、木が素直に生かされたlaboratoryの家具やアイテムは生まれる。

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laboratory インタビュー ものづくり

「ものに物語を落とし込んでいくんです」
田中さんはオーダーの家具をつくる際、デザインしようとしてかたちを決めてはいない。お客さまとの対話を通してその方やご家族のバランス感を読み取る、くみとっていくことが仕事なんです、と田中さんは言う。

「樹齢150年の木を使った家具は、やっぱり最低でも150年は使ってもらいたい。でも、素材はゆるやかに朽ちていきます。使い手が、その朽ちていくさまを愛着を持ちながら楽しめるようなものを作りたいんです」
何気なく目の前にある大きなテーブルも、自分が生きているよりもながい年月をかけて大きくなった木。その木を切り倒してつくられたものなんだと思うと、ものを大切にするという教えもぐっと実感がわく。

インタビュー laboratory
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laboratoryでは、家具をつくる際に必ず手動でかんなをあてている。かんなというと一般的に行われる工程だと思っていたが、最近はサンダーのみで終わらせる工房も多いという。作業の手間はかかるが、表面に「平面感」が出るんです、と教えてくれた。
かんなをかけないと、面が“ゆらめいた感じ”になってしまうのだという。「かんなをかけるのとかけないのとでは表情が本当にちがってくるし、触り心地も違う。それに、サンダーだけだと耐久性も落ちてしまいます。せっかくつくるんだったら、手間を惜しまずにいいものをつくりたいですよね」

平面感という単語が頭に残り、そのお話をうかがったあと勝手な想像をめぐらせる。ひとつの面が正しく面であり、美しいたたずまいですっと静かな存在感があるようす。ちょうどアトリエで行われてた、大きな丸テーブルのかんながけの光景を見ながらそう思った。

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「手作業によるゆらぎや表情の違いを、あえて出そうとは思っていない。出さないようにした結果、それでもうまれてくるひとしずくの手のくせが、その家具のあじわいになるのだと思うんです」

手づくりだからいい、手づくりだから温かみがあるという単純なことではない。laboratoryからうまれる家具やアイテムは、お客さまや素材などに対して手づくりだからこその近い距離感がある。その距離感と真摯に向き合う想いが、laboratoryのよさなのだと思う。それが使う側にも伝わっている。

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木にこだわりをもってものづくりをされている田中さんに、オイルヌメ革の素材感についてうかがった。
「仕事がら、いろんな木に触れる機会が多いんです。それをいったんリセットするためにも、木以外のものに触れたくて。たとえばコーヒーのテイスティングでは、味が分からなくなるのを防ぐために一度口の中をリセットするために水を含んだりする。それと一緒で、木以外の“いい素材”触れるっていうのは、ぼくの手にとってはとても大事なんです」
そういった意味で革はとても重要な存在、とこたえてくれた。話のなかで出てきた「手の感覚がリセットされる」ということばは、きちんと素材に向き合っているひとならではの表現だ。

「オイルヌメ革って、吸いつき感がいいですよね。触れたときに、完全な平面でとらえるのではないからかな。シボの凹凸の頂点が、手にくっつく感じがします」
一枚の革のなかでシボの大きさや感じがずいぶん違うけど、位置の違いでこんなに違った表情なんですね、と大きな革を目と手で確かめていた。

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