1. FUTAGAMI / ものづくりを訪ねる
FUTAGAMIインタビューものづくり

「真鍮」ときいて、どんなものを想像するだろうか。
「FUTAGAMI」の商品をはじめて手に取ったとき、単純にずっと触れていたいと思った。金属だけど、手になじむというのがどこか不思議な感覚。ちょっと想像と違う質感。

富山県高岡市。ここは、日本の銅器生産のおよそ95%を占めている地域だ。そんな高岡市内に、明治30年創業の二上の工房はある。10数社の鋳造の仕事場が肩を寄せ合うように集まる一角に建つ、工房を訪ねた。 作業ごとにいくつかのスペースに区切られた、天井の高い大きな空間。取材に訪れたのはまだ寒い季節で、商品の仕上げ作業に取りかかる職人の足元には、ひとり一台ストーブが置かれていた。

真鍮の生活用品のブランド「FUTAGAMI」を手がける二上は、もともと仏具の輪灯をメインに製作していた。住環境の変化もあり、輪灯はしだいに一般家庭での需要が減少。二上の社長である二上利博さんは、鋳物に対して危機感があったという。そんななか訪れた、デザイナーの大治将典さんとの出会い。およそ3年前のこの出来事が、FUTAGAMI誕生のきっかけとなった。

インタビューFUTAGAMI

「昔から扱ってるから、特徴なんてあらためて考えたことがなかったんですけど、やっぱり味わいのある色味はいいですよね。経年変化をするので、使い込めば使い込むほど味わいがでる。その人なりの使い方でつやが出たり、雰囲気がでたり」
真鍮がもつ金色は、どこか懐かしくもあり派手に輝く金色ともすこし違う。
「昔よくあった真鍮製のドアノブのように、何年も使い込まれてつやつやになっていく感じが理想なんです」と二上さんは言う。

FUTAGAMIの商品は、真鍮の質感に大きな特徴がある。通常の真鍮鋳物が行う表面の磨きやメッキ、塗装を施さず、砂型から出したままの鋳肌を生かしているのだ。 「FUTAGAMIの商品は、感覚的には備前焼に近いと思っています。備前焼は釉薬を使わずに自然のままの焼きあがりですが、ある程度色味や風合いはコントロールができるそうなんです。そういう“コントロールできる中の表情の出し方”という感じは共通点があるな、と」

FUTAGAMI インタビュー ものづくり インタビュー
FUTAGAMI インタビュー

真鍮の鋳肌を生かすということに、抵抗はなかったのだろうか。

「ありましたね。これまでもデザイナーさんの中には“この途中の素地の段階で完成品にしてください”という方はけっこういらしたんですよ。ただ、つくる側としてはこれはフィニッシュじゃないよとか、逆にストップをかけてたんです」

表面加工を施さず、思い切ってありのままの質感を生かしてつくると決めたあとも、悩みが続くこととなる。デザイナーの大治さんは、円形脱毛症にもなってしまったという。それくらいすごく本気で集中して考えてましたから、と二上さんは当時を振り返る。

「つくり手側としても何回作っても終点がわからない。これでいいのかなという思いで、商品のお披露目となる展示会当日を迎えました。みなさんの反応を聞いてようやく、間違ってなかったんだな、と」



FUTAGAMIの工房には、若い職人の方がたくさんいる。若い世代の担い手が不足しがちなものづくりの現場で、頼もしい光景だ。

「昔はこの仕事のつらいことしか伝えられてなかったんですが、いまはもっとうまく説明できるようになってきたからかでしょうか。自分たちがつくったものを、ちゃんと使ってもらってることをうまく伝えられると、モチベーションとしてやる気がでますよね。ものに対する愛着というか、プライドもわく。そこらへんをうまく伝えられるようになったのかなと思います」

最近では、ものをつくりたくて入ってくるひとが増えてきている。昔はものをつくりたいのではでなく、仕事として割り切っているひとが多かった。いまは展示会で見て「こういうものをつくっている会社で働きたい」といってくれる方が来てくれて。流れが変わってきてるなと思います、と教えてくれた。

ものづくり インタビュー FUTAGAMI
FUTAGAMI インタビュー

FUTAGAMIの商品は、生活の中にちゃんと溶け込むものばかり。生活用品としてきちんと用途や使い勝手があるものにしたい、という想いをこめている。
「ちょっとしたことなんですけど、道具を使うことによってなんでもない日常がちょっと違って感じられたらいいな、と僕は思っています。気持ちが豊かになれば最高だなって。箸置きに箸を揃えて置くだけで気持ちよくなるとか、心地いいとかそんなふうに思って使ってもらえたらうれしいです」

いつもは缶ビールを飲んでいたけれど、ちょっと趣を変えて気に入った瓶ビールにしてみる。ちゃんとトレイにのせて運んだ瓶ビールを、栓抜きを使って開けてグラスで飲む。ひと手間かけてきちんとすると、それだけでちょっとぜいたくな時間になる。


FUTAGAMIをスタートさせるときから、そういった思いはあったのだろうか。 「最初はそこまでは考えてなかったんです。だんだん作っていくうちに、感じるようになって。これはなんで気持ちいいのかなと考えるようになって、実はそういうことが隠れていたんだと最近少しわかるようになってきました」

商品をどのように使ってもらいたいか、という問いに対して、 「どんなふうに使われてもいいです。ただひとつ望むとすれば、ちゃんと手にとってもらいたい」という答えが返ってきた。

手にとる、という特別でない動作が、ものにとってはとても大切なこと。

「引き出しの隅っこで全然触られもせずに、見向きもされないのはやはり困りますね。手で触ってると、真鍮の変化もすごくまろやかになるんです。だから触って使ってもらうのがいちばん。その使い方は、どんなものでもかまいません」

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最後に二上さんから、目指すのは温かみのある金属ということばを聞いて、素材に対する愛着をますます感じた。FUTAGAMIの商品に触れたときに感じた“ずっと触れていたくなる衝動”は、そんなつくり手の想いが商品にも伝わっているからだと思う。
「冷たくて鋭いものではなくて、ちょっと柔らかくてほんわかしたようなテクスチャやデザイン、表情にならないかなと思ってつくってるんです。少しはなってきてるかなとは思うんですけどね」

FUTAGAMI
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