1. カキモリ / ものづくりを訪ねる
カキモリインタビューものづくり

通りに面した大きな窓越しに、なにやらつくっている様子が目に飛び込んでくる。一見すると、なんのお店なのかわからないかもしれない。と思っていると“文房具のお店です。”と書かれた黒板が、そんな疑問を吹き飛ばすように出迎えてくれる。とても興味をひくこの作業風景は、たくさんのお客さまが店内へと入るきっかけとなっているのだそう。

作業カウンター内にいらしたのはこのお店「カキモリ」の店主、広瀬琢磨さん。2010年に東京・蔵前にオープンしたカキモリは、ノートの表紙や中紙を自分で選んでオーダーすると、その場でノートが出来上がるという文房具店だ。小さいころから親しんできた「ノート」をオーダーできるときいて、思い出したように急に手書きが恋しくなった。

インタビューカキモリ

「もともと、祖父の代から地元群馬で文房具屋を営んでいたんです。ただ、最近文房具屋って元気がなくて。そのなかで、文房具専門店として新しい形で出したいな、と。セレクト商品だけだとロフトや東急ハンズ、雑貨屋に勝てないのでオリジナリティのあるものを、と考えたんです。“紙もの”だったら作れるだろうと思って、ノートを作る機械を探し始めました」

ノートがオーダーできるということと同じくらいわくわくしてしまうのが、オーダーしたノートが自分の目の前で仕上がっていく、ということだ。「つくっているところをあえて見せる、というのは最初から考えていたんです。やはり本当に手作りでできていく現場っていうのを、お客様に見せたくて」と広瀬さんは言う。

「ただ、全部店で手づくりとなるといいものはできないので、ノートに使う部材の製作など職人に任せるべきところは任せています」

カキモリ インタビュー ものづくり インタビュー

カキモリのwebサイトには、とても印象的な一文が載っている。
“東京の下町に息づく職人技をずっとずっと残してゆくのも、カキモリの大切な仕事です。”

台東区は、昔から職人が多い街でもある。日本橋に和紙をつくっているところがあり、その加工場がカキモリのある台東区蔵前のエリアに集まっているという。それを知って「この場所だと紙のストーリーがつながるなって。もうここしかない、と」そんな考えもあった。
カキモリには、職人はいない。カキモリが考える「職人技を残してゆく」ことは、もっと有機的なつながりによって生まれるものだ。ノートの部材の製作や革の加工など、町工場の職人によってつくられたそれぞれの部材を、カキモリで最終的に商品に仕上げる。オーダーのノートを通して、お客さまと職人をつなげる役目となっているのだ。
「小ロットだけど手づくりで良いものをつくれる現状って、職人さんががんばってくれているからこそですよね。良いものを求めるお客さまがいて、日本の職人がそれに応えてくれる。この文化はなくすべきじゃない。少しでもその手伝いができればいいなと思っています」

カキモリ
カキモリ インタビュー ものづくり インタビュー

カキモリには、オーダーのノートのほかにも「手で書く」ことにこだわった万年筆をはじめとする筆記具や、厳選された紙ものが並んでいる。
ふだん、どのくらい手で文字を書いているだろうか。送る電子メールの数ほど便せんで手紙は書いていないし、ペンをもつ時間よりキーボードを打つ時間のほうが長い日のほうが多いひともたくさんいるだろう。
そんな時代のなかで、書くことにこだわる広瀬さんの考えとは。

カキモリ


「もともと文房具は、作業を効率化するために生まれたものです。だからIT化によって文房具を使うよりも便利になるものは、もちろんどんどん使ったほうがいいと思います。うまく役割分担をしていくことが大切ですよね」

気持ちを伝えたり、物事を深く考えるとかアイデアを練るという部分は、効率化できない部分が大きい。手書きはそういった場面で絶対必要だし、成熟した社会のなかでこそ大事なこと、と教えてくれた。効率化して空いた時間を、書くことでコミュニケーションをとる時間に使ってもらいたい。そんな想いも詰まっている。

カキモリ インタビュー ものづくり

広瀬さんは、ロールペンケースにお気に入りのペンを収めている。オイルヌメ革にくるくると巻かれたペンは、万年筆や赤の水性ペン、複合ペンなど書くことにこだわりのある広瀬さんならではのセレクトだ。
「オイルヌメ革は、なめらかで本来の革の風合いが出てますよね。男性にも女性にも好まれる革だと思います。硬いしっかりした革もいいですが、こういうやわらかい革はちょっとカジュアル感があるし、『革らしさ』も出てますよね」

TOP