1. 杉本 壽さん
Bar OaK

「ウィスキーと味わう、ひとりの時間」  杉本 壽さん

訪れたのは東京ステーションホテル内の「BAR Oak」。
シングルモルトのスコッチウィスキーを多数取り揃える。日々とり巻かれている日常の音が、一気に遠く聞こえるような落ち着いた空間だ。
重厚感のある扉を開き、席に腰を下ろすと、ふっと肩の力がぬけるような程良いリラックス感に包まれる。

駅舎創建当時(1914年)の赤レンガが見える、時の重なりを感じる店内で、
マスターバーテンダー杉本壽さんにウィスキーのこと、バーの楽しみ方を伺った。

インタビュー


―― 初歩的なことですが、ウィスキーの「シングルモルト」、「ピュアモルト」はどういう違いがあるんでしょうか。
シングルは単一の蒸留所でつくられたものを言います。ピュアモルトというのは、同じ会社の同じ年代の樽。それを少し混ぜたりして、モルト(麦芽)同士をうまく調節したもののことを言います。


―― なるほど。では初めてウィスキーを飲みます、という方だったら何をおすすめしますか。
もちろんそれは、その人の好みをきいて相応のものをおすすめします。ただ入門というのならば、ブレンデッドウィスキーを説明しますね。手頃な価格ですし、癖もなくて飲みやすい。それとまたこの味が飲みたい、と思えば同じ味を求めることができます。その一本がなくなっても、またブレンドしてそれに近づけることができますからね。でもシングルモルトやピュアモルトはそうはいきません。


―― その時の出会い、というのが大きいんですね。
例え同じ樽からとっても、時間が経てばまた違ってきますからね。そして、その樽が終わってしまえばもう味わうことはできません。ブレンデッドウィスキーの味は、30から40種類のモルトを使って作ることができます。

Bar OaK


―― ちなみに杉本さんご自身はウィスキーをどう楽しまれていますか?
やっぱり3年くらいのウィスキーより、長年たったのをストレートで飲みたいですね。でも普段飲むのは、手頃な価格のもの。家では普通の氷を入れて、少し水を入れて飲んでいます。大体ウィスキー1に水1が一番いいような感じです。ウィスキーの薫りも飛ばないですし。ちなみにオンザロックで飲む場合は、グラスを最初氷で冷やしたほうがいいと思います。そして氷が少し融けたら、その水を一旦抜いて、ウィスキーを注いであげる。そのほうが薫りもよくたちますよ。


―― ありがとうございます。では、今まで出会ったウィスキーの中で、特に記憶に残っているものはありますか。
それは、このバランタインの30年。今から40年前、日航のパーサーをやっていた方が買って来たんですよ。『ちょっと飲もうか』って。その時初めて30年を飲んで。美味しかった。本当に、美味しかった。その当時はスーパーニッカやリザーブといった、国産のブレンドウィスキーが主流でしたから。なかなか簡単には飲めませんでした。


―― どんな味なんでしょうか、気になりますね……。
口で説明するのは難しいですが、やはり薫りがよくてまろやかです。ウィスキーは若ければ若いほどアルコールがツンときます。年数が経つと樽の、木の薫りがより感じられるというか。樽を作る木の種類によっても薫りは違ってくるんですよ。ウィスキーはそれそのものを熟成させる時間というのもありますが、樽を作るための木も何十年、何百年と年を重ねたものを使っているんです。そう考えると、一杯のウィスキーにかかる時の重なりというのは、相当のものがあります。

インタビュー


―― 確かに……その時間を想うとまた一層深くウィスキーを楽しめる気がしますね。話は少し逸れますが、杉本さんのバーテンダーとしての歴史の中で印象深いお客さんとの出会いなどはありますか。
少し、長くやっていますからね。ありがたいことに長年通い続けてくれるお客さまもいらっしゃいます。でもえこ贔屓してはだめなんです。カウンターに座ったらみんな同じ大切なお客さまです。どんな立派な肩書きに就いている方も、会社から離れれば一個人です。


―― そうした杉本さんの姿勢によって、より日常から離れられるのかもしれませんね。
どうでしょうか。でもそういった意味では、ひとりで飲むのが一番良いのではないでしょうか。あなたが飲むなら、と言って付き合うのではなくて、自分が好きな物を自分のペースで飲む。私も、飲みたいものを飲んでもらえるように、いつも考えています。でも、お酒を飲む方は、大体好みを持っていると思います。ですから、自分の飲み物はひとつかふたつ、持っておいた方がいいかもしれません。そうしたほうが、楽しいと思いますよ。

ウィスキーと東京駅、そしてバーテンダーの杉本さん。
それぞれの歴史が相まって、時の重なりを強く感じた「BAR Oak」。
ゆっくりその重なりに想いを馳せるひとときは、不思議と心から落ち着くものでした。

杉本さんはシェーカーとしての腕前も一流なので、訪れた時はぜひカクテルもご一緒に。
あなたも、日常を離れた心落ち着く時間を、楽しんでみませんか。


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Bar OaK
東京ステーションホテル (http://www.tokyostationhotel.jp) 2F・17:00〜24:00(L.O. 23:30)。
ウィスキーはもちろん、杉本さんによるオリジナルカクテル「東京駅」も、高い人気を誇る。

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