1. 今日のコラム/文化誌が街の意識を変える展

文化誌

地域を知ると、日本の文化や暮らしが見えてくる。
冊子を通して日本各地を知る展覧会が開催中。


ひとが住む場所には、そこに根付く文化や風習、その土地ならではのひとの暮らしがあります。ひとつとしてまったく同じ場所はありません。その土地それぞれの魅力を、冊子という手に取れるツールにして発信しているひとが、全国にはたくさんいます。自分の住んでいる場所への親しみや愛着、そして旅先での新たな楽しみ。地域が発行する冊子を通して、ひとやもの、文化などさまざまなことを再発見できます。その土地と向き合って、どう発信するか。情報だけでなく、つくり手の熱意や想いも、じわじわと伝わってきます。

今回は、「日本を知る」「ものづくりを楽しむひと」という観点から、皆さんにひとつの展覧会をご紹介いたします。

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日本各地で、地域情報に特化した雑誌や小冊子がたくさん発行されています。行政が県外に向けてPR用につくったものや、民間の団体が街の歴史を記録する目的でつくったものなど、発行目的はさまざま。皆さんのお住まいの地域では、どんな冊子が出ているかご存知でしょうか。

観光ガイドとはまた違った、その街がもつリアルな側面。自分たちの住む街の日常と向かい合ってつくりあげているんだなという「地元への想い」が、とても伝わってきます。知らなかった土地だけど、手にとってじっくり読むとなんだかその土地に親しみを覚え、行きたくなる。

そんな魅力ある冊子を47都道府県から各1点ずつ選定し、一同に集めた展覧会が、現在開催中です。場所は、渋谷駅直結の商業施設「渋谷ヒカリエ」内にある「d47 MUSEUM」。企画の担当者である、d47 MUSEUMの黒江さんにお話をうかがいました。

文化誌


―― そもそも「文化誌」とは?

d47 MUSEUMは、文化誌の定義として以下のことをあげています。

・その土地らしさがあり、それを外に向けて発信している
・個人的ではなく、地域の向上を目的としている
・メディアとしての発行部数がある
・その土地のひとがやっている
・デザインの工夫があるもの
(d47 MUSEUM webサイトより引用)

展示


文化誌


―― その土地に一歩深く入った情報が得られる魅力

この企画を立案するきっかけは、何だったのでしょうか。

「セレクト書店などで、地域のローカル雑誌や小さい冊子を手にとる機会が何度もありました。読んでいくうちに、大手の旅行雑誌とは違う視点でその土地のことを見ていて、それがとてもおもしろく感じたんです」
最近出会った新しい文化誌と、黒江さんが学生のころから知っていた「とさのかぜ(高知県)」や」「雲のうえ(福岡県)」など、昔からあるものがリンクしたという。
「いま、さまざまなフリーペーパーやローカル誌が出ているなかで、昔からあるものや、いま若い方に向けて新しく発信しはじめているものをひとつにまとめると、もしかしたらその土地らしいローカル発信が見えてくるのでは、と思い企画を立てました」


文化誌の魅力は「一歩深く入ったおもしろさ」。

「文化誌に感じるものって、一般的な観光情報からもう一歩その土地に深く入っているということ。すごく日常的なことや、その土地にとっては当たり前のことをフューチャーして書いているんです」
この土地だからこそ生まれた文化や風土、こういう生活でこんなことを大切にしてきたということが伝わる内容。
「ある農家さんの食卓が紹介されていたら、ふつうは単にその土地のごはんだ、くらいにしか感じないかもしれないのですが、それを“文化”として見せてくれるので、より深く知ることができるんです」
文化誌では、想像以上に「何気ない日常」が誌面で展開していることに気づきます。会場ではじめて知り、特に気になる存在だったのが、徳島県の「あおあお」。本当に特別ではないふだんのことが、こんなにも読者をひきつける内容になるのか、と思える1冊でした。そして、写真やレイアウトも美しい。

展示


意外なことに、観光地のほうが文化誌が少ない印象とのこと。
「観光資源がそんなに多くなくて、そこにあるものをきちんと伝えていきたい、という方たちは、自然にこういうものを制作する発想になるのだと思います。観光地の場合は、東京の出版社が地域のなかに入ってどんどんつくっていく。自分たちでつくって、差別化するというのはなかなか難しい、と京都で制作している方がおっしゃっていました」

文化誌


展示


―― 文化誌にかける熱がダイレクトに伝わる、制作者の声

会場でぜひ楽しんでいただきたいのが、音声ガイダンス。それぞれの文化誌について、黒江さんの解説とその文化誌の制作担当者(編集者や行政の担当者など)の想いを聴くことができます。
「話し方だけで、こういう方がつくっているんだな、ということがよく伝わります。それだけで、ちょっと見方が変わったり。かっちりとしたイメージだったけど、こんな優しそうな感じの方がつくっているんだな、などいろんな想像を楽しめます」

今回の展覧会、来場者の反応はどういった様子なのでしょうか。

「皆さん、こういったものが日本全国にあるということが知れた、という感想が多いですね。あとは、文化誌から伝わってくる熱やその土地のことが知ることができてよかった、という感想もいただいています」
もともとこういった文化誌に興味はあったけれど、どういった目的・想いでつくられているのかまでは知らなかった、という方も多くいるようです。また、バックナンバーが読めるコーナーがあるため、滞在時間が長いのも特徴的だという。
「47の風土や伝統、大切にしてきていることを、いろんなカテゴリを通して感じてもらうというミュージアムです。その土地に実際に行ってもらうことが最終目的なので、ちょっとでもそのきっかけになればいいなと思います」

d47 MUSEUMのwebサイト上には、展示している各都道府県の文化誌の一覧が載っています。自分の街からはどんなものが出ているか。もしかしたら、知らない文化誌かもしれません。それを知るだけでも、楽しめます。たくさんの文化誌を手に取るにつれて感じたのは、「観光地を目指すだけではない旅もおもしろいかもしれない」という、大きなわくわく感。また、ものづくりを楽しむ文化誌の向こう側にいる制作者の熱意も、しっかりと伝わる展覧会でした。


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「文化誌が街の意識を変える展」

場所:d47 MUSEUM(東京都渋谷区)
会期:2014年6月15日(日)まで
料金:500円
http://www.d47museum.com

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