1. No.12 控えめな道具

革

コツコツつくって50余年の工房を、ウロウロとしてみます。
つくる職人、使う道具、できあがったものに近づいたり離れたりしながら、
工房の音や声、匂いを綴るコラムのような、ちょっとしたよもやま話です。

革製品

2013/11/26

控えめな道具

見たことがあるような、ないような。特別な呼び名のないこの道具は、職人が修理をするときに使うものです。なんとも控え目な印象の道具ですが、実はこれ「手動式ミシン」。ボディーはもともと彫刻刀でした。刃先を取り外してミシン針を装着。針の太さ別に使い分けをしています。

新しい製品を一からつくるときとは違って、修理では、傷んだ部分を中心としてなるべく小さな範囲で作業をします。傷みを広げず、美しく仕上げるためです。

ミシンが入らないような細部を縫うとき、この手動式のミシン針が大活躍します。「何事もなかったみたい」が褒め言葉。繊細さと根気が必要な修理の現場には、職人の技術と経験に工夫を重ねた、控え目で優秀な道具が揃っています。


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