1. No.03 憧れ

革職人

コツコツつくって50余年の工房を、ウロウロとしてみます。
つくる職人、使う道具、できあがったものに近づいたり離れたりしながら、
工房の音や声、匂いを綴るコラムのような、ちょっとしたよもやま話です。

工房

2013/10/11

憧れ

汚れたうわばきを、柄のついたブラシで嫌々洗っていた小学生時代。ひんやりとした玄関先から香るくつ墨の匂いと、ブラシの音。シュッシュッシュとリズミカルに手際よく革ぐつを磨く父の手元に、体育座りで見入ったものです。

くたびれていた革ぐつの表面が、クリームやブラシ、布で撫でられ、いつの間にやら自慢げに黒光る。それは、今日や明日のことを、じっと考える時間のようでもあり、忘れるための時間のようでもあり。大人の世界を想わせました。

命あったものの重みと美しさが、本革のもつ輝きであり魅力です。憧れの革製品に出会えたときには、空拭きから始めましょうか。


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