THE STORY OF OUR PRODUCTS 「心が満たされるもの」が生まれるまで

TIMELESS

THE STORY
OF OUR PRODUCTS

「心が満たされるもの」が生まれるまで

2023.11.13

今年のホリデーシーズンのテーマである「心が満たされるもの」は、日頃から土屋鞄が大切にしているものづくりの精神でもあります。その精神はどのような形で製品やシーズナルカラーに込められているのか、アーティスティックディレクターの大野が語ります。

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OF OUR PRODUCTS

「心が満たされるもの」が生まれるまで

2023.11.13

今年のホリデーシーズンのテーマである「心が満たされるもの」は、日頃から土屋鞄が大切にしているものづくりの精神でもあります。その精神はどのような形で製品やシーズナルカラーに込められているのか、アーティスティックディレクターの大野が語ります。

自分自身と調和する、
「相性のいいもの」が心を満たしてくれる

自分自身と調和する、
「相性のいいもの」が心を
満たしてくれる

「心が満たされるもの」は、「心が高まるもの」と似ているようで、実は違うものですよね。高いものや珍しいもの、人にうらやましがられるものが手に入った時は心が高まりますが、日々の生活に安らぎと潤いを与えてくれるのはむしろ、無理せずとも自然と手に入り、そのまま自分の暮らしになじんでくれるもの。まるで初めからそこにあったかのように感じられて、持っていなかった頃が思い出せないほど自分の暮らしになじむアイテムに出会えたら、それはとても幸せなことではないでしょうか。

僕の心を満たしてくれるものといえば、真っ先に思い浮かぶのがお気に入りの器たち。特にアンティークの器が好きで、長い間使われてきたからこそ醸し出される独特な存在感や、手仕事ならではのゆがみや釉薬のムラといった個性を楽しんでいます。それぞれデザインもつくられた地域も異なるのですが、どの器もさまざまな料理に合わせられるし、器同士も調和して見えるから不思議です。だから気負うことなく日常になじみ、使うたびに自分の心を穏やかにしてくれる。人とモノ、モノとモノの間にも、言葉にできない「相性」のようなものがあると思うんです。

器に限らず、どんな分野でも「本物」と言われるものは、幅広い人やシーンに寄り添う懐の深さがあります。その懐の深さをつくっているのは、数え切れないほどの小さなこだわりです。例えシンプルに見えても、よく見ると細かい要素が積み重なり、絶妙なバランスで成り立っている。構成する要素が多岐にわたっているからこそ、どんな人やシーンにも何かしら重なる部分が生まれ、柔軟に受け止めてくれるのです。

同じように、土屋鞄の製品の魅力も、職人による「丁寧の集積」にあると僕は思っています。一つひとつの技術は特殊なものでなくとも、目に見えない部分にまで妥協せず製品に向き合う姿勢が積み重なって、一つの製品へと仕上がっていく。一見するとシンプルな土屋鞄の製品が不思議とどんなシーンにもなじむのは、細かいこだわりの集積をデザインによって調和させているからなのだと思います。

シーズナルカラーが、
定番製品の新たな一面を引き出す

土屋鞄の製品はそれぞれの革の魅力を最大限に引き出すことを意識してデザインされているので、形もシンプルですし、革の色に近いベーシックカラーがメインです。でも、細かい要素の集積によってできあがっているデザインだからこそ、さまざまな色を受け入れる懐の深さがあります。例えば、定番のブラックやブラウンだと落ち着いた雰囲気のトートバッグも、カーキになるとカジュアルな雰囲気が増して印象も変わりますよね。同じデザインの鞄でも、異なる色の革を使うことで印象ががらっと変わり、製品の新たな魅力に気づかされる。これは、丁寧に細かい要素を積み重ねてつくられているからこその面白さだと思います。

特に年2回のシーズナルコレクションは、こうした色の変化による製品ごとの表情の違いを楽しんでいただける絶好の機会だと感じています。春夏と秋冬でシーズンを分けてはいますが、春夏らしい色、秋冬らしい色にこだわるのではなく、最も大切にしているのはそのときどきの時代の空気感を製品カラーにも反映させること。さらに扱うカラーも幅が広いので、カラーコンセプトを言語化し、イメージを共有することでシーズン全体の統一感をつくり出しています。

土屋鞄の製品はそれぞれの革の魅力を最大限に引き出すことを意識してデザインされているので、形もシンプルですし、革の色に近いベーシックカラーがメインです。でも、細かい要素の集積によってできあがっているデザインだからこそ、さまざまな色を受け入れる懐の深さがあります。

例えば、定番のブラックやブラウンだと落ち着いた雰囲気のトートバッグも、カーキになるとカジュアルな雰囲気が増して印象も変わりますよね。同じデザインの鞄でも、異なる色の革を使うことで印象ががらっと変わり、製品の新たな魅力に気づかされる。これは、丁寧に細かい要素を積み重ねてつくられているからこその面白さだと思います。

特に年2回のシーズナルコレクションは、こうした色の変化による製品ごとの表情の違いを楽しんでいただける絶好の機会だと感じています。春夏と秋冬でシーズンを分けてはいますが、春夏らしい色、秋冬らしい色にこだわるのではなく、最も大切にしているのはそのときどきの時代の空気感を製品カラーにも反映させること。さらに扱うカラーも幅が広いので、カラーコンセプトを言語化し、イメージを共有することでシーズン全体の統一感をつくり出しています。

今年の秋冬のキーワードとして僕の中に浮かんできたのは、「Cloudy&Vividness」。製品カラーはブルーグリーンやグレーがかったパープルなどの落ち着いた色と、オレンジやレッドといったビビッドな色を織り交ぜたラインアップです。コロナ禍を経て制限が解除され、世の中が大きく変化した後の残照のイメージを製品カラーに反映しました。

しかし、こうしたコンセプトも初めから決めていたわけではなく、浮かんできたカラーを解釈して言語化していった結果の産物なんです。頭で考えたコンセプトやトレンドに合わせて組み立てようとすると、どこかで無理が出てしまう。まずは感覚に従った方が、全てが自然とスムーズに流れていくんです。

そうやって感覚に従って決めたカラーが、たまたまトレンドカラーと重なることもあるから不思議です。やはり、私たちは無意識のうちにそのときどきの空気を感じていて、感覚に合った色を選んでいるのかもしれません。ですから、シーズナルカラーの製品たちが手に取ってくださった方の感性と無意識に重なって、ものを通して共感し合えたらうれしいですね。

無理せず自然と
つながっていく心地良さ

土屋鞄のシーズナルコンセプトは、グラデーションのようにつながっているのも特徴です。秋冬の一つ前となる春夏のシーズナルカラーのキーワードは「Vividness」。パンデミックの混乱も少しずつ収束し、明るい方向に大きな変化が生まれつつある雰囲気を鮮烈な変化の兆しと捉え、鮮やかな色味で表現したシーズンでした。そこに「Cloudy」というキーワードが追加された秋冬のコレクションでは、鮮烈な変化の後の余韻や、明るさの中では見えていなかった存在にも目を向ける余裕が生まれつつある雰囲気をカラーで表現しています。

実はこうしたコンセプトのつながりも、全て偶然の産物。前回のコンセプトとは関係なく考えていても、蓋を開けてみるとエッセンスを一部引き継いでいるんです。でも、よく考えてみればそれは当然ですよね。私たちの時間も暮らしもひと続きになっていて、半年前の自分と今の自分がまったく別物なんてことはありませんから。そんなふうに、無理せず自然と生まれる連続性や共通点も心地良さにつながるのかもしれません。

土屋鞄のシーズナルコンセプトは、グラデーションのようにつながっているのも特徴です。秋冬の一つ前となる春夏のシーズナルカラーのキーワードは「Vividness」。パンデミックの混乱も少しずつ収束し、明るい方向に大きな変化が生まれつつある雰囲気を鮮烈な変化の兆しと捉え、鮮やかな色味で表現したシーズンでした。

そこに「Cloudy」というキーワードが追加された秋冬のコレクションでは、鮮烈な変化の後の余韻や、明るさの中では見えていなかった存在にも目を向ける余裕が生まれつつある雰囲気をカラーで表現しています。

実はこうしたコンセプトのつながりも、全て偶然の産物。前回のコンセプトとは関係なく考えていても、蓋を開けてみるとエッセンスを一部引き継いでいるんです。でも、よく考えてみればそれは当然ですよね。私たちの時間も暮らしもひと続きになっていて、半年前の自分と今の自分がまったく別物なんてことはありませんから。そんなふうに、無理せず自然と生まれる連続性や共通点も心地良さにつながるのかもしれません。

「自然な調和」は、土屋鞄の製品にも表れているように感じます。例えば普段はスーツと合わせて使っている鞄を、休日のカジュアルな装いに合わせても自然となじむ。並んで歩いている二人がそれぞれ別のシリーズの鞄を持っていても、どこか似た雰囲気が醸し出される。表面的な部分だけ見るとテイストが異なるように感じるものも、本質が共通しているもの同士は合わせてみると意外としっくりくるんです。

ホリデーシーズンは心浮き立つ時期ですし、街全体がきらきらしたものであふれ返る季節です。そんなこの時期ならではのわくわくを楽しみつつも、むしろ心高ぶる時期だからこそ、自分を穏やかな状態に戻してくれるものとの心満たされる時間も、大切にしてほしい。

皆さまの日常の中の「心が満たされる時間」に土屋鞄の製品が寄り添えたら、私たちにとってこれ以上幸せなことはありません。


PROFILE
大野 真彰:製品の企画立案を担う、土屋鞄のアーティスティックディレクター。コンセプトから手掛けた主なシリーズは、「オリジンオイルヌメ」「ブラックヌメ」など。

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