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寒い冬のある日、高熱を出した当工房のスタッフは近所にある診療所を訪れました。高熱でもうろうとしながら病状を伝えるスタッフに、先生は優しくゆっくりと質問を始めました。
「安静にして治すしかないなぁ。忙しくても少し休まなくちゃいけないね。で、どんなお仕事をしているのかな?」
「革を使っているかばん屋なんです」
「ほぉー、僕は鞄が大好きなんだよ。ちなみに、何て言う名前のお店なの?」
「土屋鞄製造所と言います」
「う、うぅん?」
「何だか、聞いたことがあるなぁ。ちょっと待っててね…」
そう言って、診療室の奥の部屋へ入っていった先生。数分後、その手に持って現れたバッグは、なんと土屋鞄の「ヌメ革ダレスバッグS」だったのです。
「うあぁー、それうちの鞄です!わぁー、すごい!嬉しい!!」
と、思わぬ偶然に興奮したスタッフは、高熱も忘れ大喜びだったと言います。


「いつか先生の取材をさせて下さい」と、お願いをしたあの日から2年。再びに訪れた診療所には、より一層深いあめ色に変化したヌメ革ダレスバッグSがありました。
東京は板橋区にあるこの「天木診療所」は、52年前に開院して以来ずっと変わらずに地域の人々に愛され続けている“まちの診療所”です。お父さまの代から引き継がれた天木聡先生は、週に3回は往診に出かけているという“まちのお医者さん”。もともとは、大きなサイズのダレスバッグで往診されていた天木先生でしたが、「大きな鞄は場所をとって不便だし、いかにも往診ですと言わんばかりに目立ってしまうのが難点でね」と、小さなサイズのダレスバッグを探していて、当工房のダレスバッグSを発見されたそうです。

「この鞄は、小さくても口が大きく開くから道具を出し入れしやすい。それに中が3つに区切られているから、往診道具をきれいに分類できて本当に便利なんですよ。作りがしっかりしているから、殆ど型くずれもしていないし。それから色も気に入ってます。こういう味わいのある茶色が好きなんでね」


先生の往診のお伴となってから4年になるダレスバッグSには、目立った傷も汚れもなく大切にして頂いている様子が伺えます。特別な手入れはしていないと謙遜された先生ですが、その鞄を見ればとても大切にして頂いていることがすぐに分かりました。

今回の偶然の出逢いは、職人が優しい気持ちで作った鞄が、いろいろな場所でいろいろな人に大切に使われていることを教えてくれました。どこかの街でそれぞれに愛されている鞄と、また出逢いたい。職人もスタッフも心からそう思います。そして、たくさんの人に愛される鞄をこれからもずっと作り続けていきたいと思っています。


文章/渋谷志帆
新しいカタログをお送りします
私の鞄自慢大募集
今回の天木先生の取材内容は、当工房の春のカタログに掲載中です。その他、楽しいコンテンツが満載の春のカタログは、ただ今ご注文を頂いておりますお客様のお荷物へ同梱してお届けしております。カタログだけをご希望のお客様は、カタログ請求ページよりご請求くださいませ。
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