美術大学を卒業後、CM製作会社を経験したのち、手によるもの作りをする職人たちの側で働きたいというかねてからの想いから、土屋鞄製造所に入社した渋谷。これまで数多くのバッグや小物類の商品企画に携わってきた彼女が、ほぼ毎日のように使っているのがこのオイルヌメトートなのです。鞄に関する専門的な知識と、様々な種類のバッグを見てきた渋谷だからこそ、購入を決めるまでには厳しい目でじっくり時間をかけて検討したと言います。 「デザインや素材はもちろんですけど、私は本や雑誌がとても好きなので、それを気兼ねなくザクザク入れられるサイズと強度が、まずは第一条件。それから機能的な面で使い心地にストレスがないことも、毎日使うトートには大事なポイントでした。でも何と言っても触れただけで気持ちが和んでしまうような、この柔らかなオイルヌメ革の素材を手にして“出会ってしまった”と思ったんです」。
「光沢感に気づき始めたのは、2ヶ月目位から。渋谷流メンテナンス方法、教えます」。 渋谷がこのオイルヌメトートと出会ってから約2年。使い始めは焼きあがったばかりのパンのようにふんわりと柔らかな手触りの素材感が、2ヶ月程使い込んだ頃、徐々につやを見せ始めたのに気づいたと言います。今や優しい光沢に包まれ、しっとりと手に吸い付くように馴染む渋谷愛用のトートは、膝の上で、運転する車の助手席で、時には飼い猫のコトちゃんの枕代わりになりながら、手で触れ光を浴びる度に、ゆっくりと穏やかにその表情を変化させてきました。 「少しキズが付いてしまった時はね、トートを膝に乗せて傷の部分を指で優しく揉みこんであげるの。そうすると、革に含まれているオイルが染み出して、ほとんど目立たなくなってしまうんだから!」。ペットのように可愛がりながら使い込んだ2年間で発見した、オイルヌメ革の“渋谷流メンテナンス方法”も教えてくれました。 「オイルヌメの良さを一度知ってしまったら、もう浮気はできません」。 味わいを深めたこのオイルヌメトートといつも一緒の渋谷ですが、実は同じトートをもう一つ欲しいと言います。「この一代目はこのまま使い続けてしっとり感を楽しんで、二代目は新色のブラウンに挑戦してどんな色になるか育ててみようかと。鞄はたくさん持っているけれど、結局押入れにしまい込んでいるのがほとんどの飽きっぽい私が、こんなに長く同じバッグを使い続けていることに母親にも驚かれました。オイルヌメの良さを一度知ってしまったら、もう浮気はできませんよ」と、迷いの無い声で渋谷は話してくれました。 土屋鞄のスタッフが太鼓判を押すオイルヌメトートは、それぞれの持ち主の元でどんな表情を見せてくれるのでしょうか。職人の丁寧な手仕事が、長く愛され続けるこの鞄たちを生み出しています。