全身を作れる、そんな職人になりたいと思っているんです。
そう話すのは、職人歴2年の玉川勲だ。「全身を作る」とは、一体どういう意味なのかと私は尋ねてみた。
「服・鞄・靴と、全身を包むものすべてを自分で作ってみたいんです。難しいことは分かっているけれど、でも、それが自分の目指すところの究極の職人像なんですよ」と彼は答えてくれた。
もともと彼は服飾の勉強をしていた為、すでにオリジナルの洋服を何着も製作している。「ジャケットとかいろいろ作ったかな。最近ではあまり作っていないけど人から頼まれることが多いよ。そうそう、少し前に知り合いのプロレスラーからリングコスチュームを頼まれて作ったんだけど、すごく面白い仕事だったよ」と彼は笑いながら答えた。
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もうすぐ入社から2年が経つ彼に、工房での変化について尋ねてみた。
「最近は、いろいろと材料の手配なんかを任せて貰えるようになったかな。ようやく全体の流れが見えるようになったけれど、まだまだ経験のない作業は山のようにあるし毎日が発見だと思ってます」そう謙虚に話してくれた彼だが、同期のデッチ植木と共に工房の大きなパワーになっていることに間違いはない。
また、来月で3度目のランドセルシーズンを迎える彼に、ランドセルについて聞いてみた。
「ランドセルは、本当に製作の工程が多くて難しい鞄だと実感しています。ランドセルをしっかりと1本作れるようになるには、本当に大変な努力が必要だなと。ミシンひとつ取ってもそうだしね」
自宅に鞄用のミシンを購入してからは、オリジナルで小物を作ったりと自宅での練習にも余念がないようだ。
「洋服の縫製は、多少失敗しても糸を抜いてやり直しがきく場合もあるけれど、鞄の場合は一度失敗してしまうとやり直しがきかないんだよね。そこが凄く難しくてその反面すごく面白いところだと思う。ミシンの調節も鞄用は本当に大変で、ミシンのご機嫌を伺いながら縫っている感じなんだ」
ミシンの調節にもやはり熟練の技は必要だと彼は言った。 |
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今、作ってみたいものはどんな鞄かと尋ねた私に彼は静かに答えた。
「ランドセルをモチーフにした、大人の鞄を作るつもりなんです」
「いつか、トータルコーディネートができるようにと思っているけれど、まだまだ鞄の修行を積まなくてはいけないね。ランドセルは本当に難しい作業が多いから、この鞄を究めてそこから新しいオリジナルのデザインを生み出してみたいと思っているんだよ」と、また静かに答えてくれた。
普段とても寡黙な玉川だが、デザインに関わる話をすると目を輝きが変わる。
今年度のランドセルには、そんな玉川の案が詰まった限定ランドセルが登場する。彼らしい若々しさの溢れる限定ランドセルが一体どんなランドセルなのかはお楽しみである。
現在、工房には4人の若手職人がいる。その4人は、それぞれに未来の職人像を胸に抱きながら日々成長を続けている。その一人である玉川も、またオリジナリティー溢れる職人像を胸に抱きながら、今日も黙々とミシンを踏み続けている。 |
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