1. 岡野廣美さん

「花と楽しむ、季節のうつろい」  岡野廣美さん

草花で覆われた古い日本家屋。一見すると民家のようだが、よくみるとお花屋さん。
迷い込むように入った先には、花木との暮らしを楽しむヒントがありました。

文京区根津で「花木屋」を営む岡野廣美さんに、お話を伺いました。


―― 普段、あまりお花を買わないのですが……選ぶコツはありますか。
とにかくきれい、と思ったもの。その時の気分に合わせて選ぶと良いと思います。お花は季節先取りで、市場に出回るのが少し早いのです。私はなるべくその季節らしい花木を選びます。季節感は大事ですし、その方が長持ちしますしね。真冬に向日葵をみても少し気持ちに違和感がでますよね。あとはできたら花だけではなく、葉ものを一緒に活けてあげることが大切。切り花は水揚げをよくするために葉っぱを落としてることが多いんです。でも、葉っぱがないと不自然ですよね。葉ものをあしらってあげることで、花がイキイキとしてきますよ。


―― なるほど。花瓶などは最初どういうものが良いでしょうか。
シンプルなガラスのものですね。活けやすく、水の汚れが見やすい。でも、形によってすごく難しいんです。ですから私がお勧めしているのは少し背の高いしっかりとしたコップ。沢山お花を買わなくても、まずはコップの高さに合わせて何本か活けてみるのがいいと思います。追々、自分の気に入った花瓶を買っていつもそこに花が活けられたら、生活をより楽しめるのではないでしょうか。


―― 気に入った花を長く持たせるために、なにかしていることはありますか。
水揚げをしたものを買うこと。そしてダメになった部分はすぐ切るということでしょうか。花にとっても、見栄えがよくないですからね。でも元々切り花の命は、大体1週間くらいとみています。2、3週間咲いてくれるものもあるし、それぞれなんですけれど。


――― 鉢花の場合はどうでしょうか。
土の状態をみて、乾いているな、と思ったら水をやってください。土が乾いている時にたっぷりとあげる。毎日ちょびちょび水をあげる状態が一番よくないんです。根が腐りやすくなってしまいますから。夏や、風の吹く日は土が乾きやすいので、水をあげる頻度が多くなるかもしれませんが。鉢花は、根っこがついていてずっと育っていくのがいいですよね。宿根でしたら来年も咲いてくれますし、切り花とはまた違う楽しみがあります。


―― 岡野さんご自身はどんな鉢を育てていますか。
今はトネリコという木と万年青(オモト)があります。万年青は引っ越した時に必ず持っていく縁起もので、ずっと育てています。



―― 室内に置いていますか。
鉢の種類によりますね。蘭や観葉植物ならばやっぱり部屋の中、それも明るく暖かいところがよいです。花壇があった時は母が植えたもみじや万両、南天もありました。最初は嫌だなあと思ったんですけれど、お料理を作るようになったらそういうものがすごく役に立ったんです。その葉っぱをちょっととって料理の下に敷いたり飾ったりすると、とても美味しそうにパッと華やかになったり。だからお店には洋花だけでなく和花も置いています。きれいだなあと思ったら、和洋関係ありません。


―― 日々過ごしていて、植物から季節をみつける瞬間はありますか。
もちろん。例えば、薔薇は5月くらいに咲きますが、その直前の芽を見るのが嬉しい。“赤ちゃん”と同じで赤いんです。6月に入ったら、やっぱり梅雨の時期にしか咲かないもの。一番際立って見える紫陽花は、あのコロンコロンとした感じがかわいい。それから私が大好きなのは不忍池の蓮。7月になると急に活気づくんですよ。ワーっと背が高くなって、気がつくとピンクの花が咲き始めてる。もう夏だあっていうね。香りもよくてとてもきれい!


―― 季節ごとに楽しみがありますね。
そう。季節が移り変わる瞬間もね。冬は花が少なくなるけれど、よくよくみるともう花芽が準備されていたりして、それを探すのも楽しいんですよ。

四季のある日本。岡野さんにお話を聞いていると、それを改めて意識します。
季節の変化を楽しみながら暮らすこと。
シンプルなことですが、やってみると心が段々と瑞々しくなっていくような気がします。
まずは歩きながら、花木を見てみること。
気に入ったお花を、買いもとめてみること。

心に水を注ぐように、始めてみませんか。


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花木屋
東京都文京区根津2ー21ー7(11:00くらい〜18:30木曜定休)。
切り花や鉢花のほか、岡野さんお気に入りの雑貨や絵なども扱う。

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